私たちの六年目
「それでも俺、絶対にわかってもらうから。

梨華が俺のことを本当に好きだとは到底思えないし。

俺も梨華に対して気持ちがないし。

こんな状態でもし結婚なんかしたら、すぐに破綻するのは目に見えているから……」


昔から知っているのに、梨華という存在が怖い。


義務だの責任だのと言って秀哉を脅して。


全てを自分の思い通りにコントロールしようとしていることに……。


「秀哉……。

私も一緒に戦うから。

一人じゃないから。

二人で頑張ろう……」


私の言葉に、にっこりと目を細める秀哉。


「うん……。ありがとう、菜穂……」


そう言うと秀哉は、私の顔にゆっくり顔を近づけて。


私の唇に、静かに自分の唇を落とした。


少しの間、触れ合うだけの軽いキスをしていたけれど。


秀哉が唇を重ねたまま、私に覆い被さって来た。


そのせいで唇が深く沈んで、すぐに濃厚なキスへとその形を変えた。


初めて感じる秀哉の身体の重み。


ぎゅっと絡め合う指先。


こんなにも秀哉を近くに感じて。


なんだか眩暈がする……。
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