私たちの六年目
とろけそうに甘く濃密なキスが続いた後。


秀哉が私の頬にキスをし始めた。


その唇は少しずつ移動して、私の耳を掠めていく。


「菜穂……」


ゾクゾクするような甘く低い声で、私の名を呼ぶ秀哉。


それだけで全身が痺れて、動けなくなる。


秀哉の柔らかい唇は、次第に私の首筋をなぞり始めて。


私は思わずハッと顎を突き上げた。


「可愛い……、菜穂……」


私の首に唇を押し当てたまま、秀哉が囁く。


そんなところで話さないで欲しい。


秀哉の熱い吐息が首筋にかかるたびに、どうにかなってしまいそうだから。


私の首筋を縦横無尽に這い回った唇が、再び私の唇に戻って来て重なり合うと。


秀哉に強く抱きしめられた。


「菜穂……」


「しゅ、うや……」


どうしてかな?


どうしてなんだろう。


こんなにそばにいるのに、もっと近づきたい。


これ以上近づいたら、心臓が壊れてしまいそうなのに。


「抱きたい……」


キスの合間に、秀哉がぽつりと言った。


それを聞いた私は、ゆっくりと重い瞼を上げた。


あぁ、そうか。


もっと近づきたいって、きっとそういうこと……。


キスだけじゃ足りない。


秀哉とひとつになりたいんだ……。
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