私たちの六年目
「秀哉……」


ぎゅっとしがみつくと、秀哉はそれ以上に強く抱きしめてくれる。


「菜穂を、抱きたいよ……」


せつない声で、ため息まじりに秀哉が言った。


私も……。


私も早く抱かれたい。


もう既に思考がどこかへ行きかけているの。


理性を全部手放して、秀哉に組み敷かれたい。


でも、まだそれは出来ないから……。


「早く、秀哉……」


「ん……」


「早くそうなりたいから……。お願い……っ」


待つけど。


でも、あまり長くは待てない。


だから早く、私だけの秀哉になって……。


私の言葉に、秀哉は何度も何度も頷いていた。




その後私達は、気が遠くなるくらい何度もキスをした。


先に進みたい衝動を、必死に堪えながら。


時折鳴るLINEの音が、そのストッパーになっていたのかもしれない。




秀哉が上になったり、私が上になったり。


何度も体位を変えながら、唇が擦り切れそうなほど交わしたキスの後。


ようやく二人で眠りについたのは、一体何時だったのか。


おそらくLINEが最後に鳴った時間を見れば、その頃なんだろう。




秀哉……。


次にこの部屋に来る時は……。


私の全てを受け取って。


5年分の思いごと全部……。


きっとだよ……。
< 203 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop