私たちの六年目
「梨華の言う通りだよ」


「え……?」


「俺は会社の友達のところになんて、泊まっていない」


俺の言葉に、梨華が呆れたようにハッと大きく息を吐いた。


「やっぱり……。

そうだと思ってた。

昨日会ってた相手って女よね?

一体誰なの?

どうして会いに行ったの?

その女に会って、何を確かめたの?

まさか、その女のことが好きだとか言うんじゃないでしょうね」


察しの良い梨華。


頭の回転は、昔から速かった。


ポンポンと出て来る言葉が面白くて、おとなしそうな見た目とのギャップに惹かれていたけれど。


なんだか今はもう……。


「もし、そうだって言ったら?」


「は?」


「俺が好きなのは梨華じゃなくて、本当はその人だって言ったら……?」


梨華は目を見開き、信じられないといった表情をしている。


「何言ってるの?

5年以上も、私のことが好きだったって言ってたじゃない。

あれは嘘だったの?」


嘘……?


いや。


嘘ではなかったはずなんだけど。


「ごめん。

なんて言うか。

俺……。

そう思い込んでいただけだったんだ……」
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