私たちの六年目
俺の答えを聞いた梨華が立っていられなくなったのか、ベッドにガクンと腰を下ろした。


「ちょ、ちょっと待って……。

秀哉が菜穂を好きだっていうのはわかったけど。

菜穂はどうなの?

菜穂も、秀哉が好きなの?」


顔を歪める梨華に、俺はコクンと頷いた。


「俺が梨華にプロポーズしたあの日。

俺、居酒屋を飛び出した菜穂を追っただろう?

その時に初めて言われたんだ。

大学入学当時から、俺のことがずっと好きだったって……」


俺がそう告げると、梨華はパッと手で口を塞いだ。


「うそ……。

そんなふうには全然見えなかった……」


さすがの梨華も、これには驚いているようだ。


「誰も気づいてなかったよ。

守も郁未も。

もちろん俺も……」


俺と梨華が、なぜか同時にため息をついた。


その意味に多少の違いはあっても、そこには複雑な思いがあるからかもしれない。


「だから、菜穂はあんなに動揺していたのね。

私が秀哉の手を取った時。

私、あんなふうに怒る菜穂を初めて見たけど。

そうだったのね。

秀哉のことが好きだったんだ……」


あの時でさえ、俺は菜穂の気持ちには気づいていなかった。


きっと俺を心配してくれているんだろうって。


そう思っていたんだ……。
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