私たちの六年目
「ごめん、梨華……。

後先考えずに、プロポーズなんかして。

お前が子供を産みたいって泣くから、どうにかして助けてやりたいって思ったんだ……」


その後、どんな結末が待っているかなんて考えもせずに……。


「でも秀哉、その時は私のことが好きだったんでしょう?

秀哉、言ったじゃない。

お腹の子供の父親になってやるって。

だから、俺と結婚しようって。

なのに、なんで急に気が変わっちゃうの……?

ひどいよ、秀哉……」


「ごめん、梨華……」


どんなに誠実な言葉を紡いでも、きっと全て無駄になってしまうんだろう。


だからもう、ごめんとしか……。


「菜穂もひどいよ。

今頃になって秀哉に好きって伝えて、秀哉の心を揺らすなんて」


俺の心を揺らす、か……。


その通りだ。


菜穂の告白は、俺にとってものすごい衝撃だった。


俺の根幹が揺らいでしまうほどに。


「嫌よ、絶対に嫌。

秀哉と別れない」


「梨華……!」


どうして?


なんでわかってくれないんだ。
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