私たちの六年目
「そうね、秀哉の言う通りかも……。

私……篤弘(あつひろ)のこと、まだ完全に忘れられてないのかも……」


ぽつりと、本音を漏らす梨華。


視界が揺れるくらいドクンと、心臓が大きな音を立てた。


「なぁ、梨華」


「ん?」


「相手の男って、どんなヤツだったんだ……?」


梨華の不倫相手について、俺からは一度も尋ねたことはなかったけど。


きちんと知ることも大切かもしれない。


梨華に、納得して別れてもらうために……。


梨華は話したくなさそうな態度だったけど。


しばらくして、ゆっくりと話し始めた。


「篤弘ってね、私が通ってた美容院の美容師だったの。

もう1年くらいお世話になっていたかな。

年齢の割に若いし、すごくかっこいいなとは思ってたんだけど。

既婚者だっていうのは知っていたし。

別に恋愛感情なんて、全然なかったのよ」


不倫に発展するような相手と、一体どこで知り合うんだろうと不思議だったけど。


そうか……。


男は、女性客を相手にする美容師だったのか……。
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