私たちの六年目
思わず、ぎゅっと目を閉じた。


あの日、梨華から何度も秀哉のスマホに連絡が入っていた。


だけど秀哉はほとんど返信もしないで、ずっと私のそばにいた。


そのせいで、梨華が入院したって言うの?


そんなことって……。


「妊婦をあんまり刺激しないでくれって、医者には言われてる。

だから今いろいろと言うのは、ちょっと気が引けるっていうか……」


「ま、待って!

じゃあ私と秀哉は、梨華が退院するまで正式に付き合えないってことなの……?」


私の問いに黙り込む秀哉。


それって……。


そういう態度って……。


つまり、そうだってことなんだよね……?


「でも菜穂、俺が好きなのは菜穂だけだよ。

それはわかってるよな?」


「わかってる。わかってるよ」


昨日あんなにキスをしてくれた秀哉。


何度も好きだって言ってくれた。


その秀哉の気持ちを信じてる。


でも、こんなのって……。


「梨華はいつ退院出来るの……?」


「……わからない」


秀哉の顔は険しい。


私はそんな秀哉の顔を見ながら、大きくため息をついた。
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