私たちの六年目



「……おさん、菜穂さんってば!」


「え……?」


ドキッとして振り返ると、私の後ろに崎田君が少し怖い顔で立っていた。


「さっきから何度も呼んでるのに、どうしたんですか?」


「ご、ごめん。何かな?」


「来月のイベントの件でご相談があったんですけど」


「あ、あぁ……来月のね。いいよ、会議室に行こうか」


そう言って立ち上がると、崎田君が首を横に振った。


「もうお昼だし、良かったらランチに行きませんか?

そこで話しましょう」


「えっ、うそ! もうお昼?」


いつの間にこんな時間になっていたの?


全然気づいていなかった。


私の言葉に呆れている様子の崎田君。


私と彼は、会社近くの飲食店へと足を運んだ。


ひと通り食事を終えると、崎田君は仕事の話をするかと思いきや、「何かあったんですか?」と私に詰め寄って来た。


私の様子があまりに変だったからだ。


崎田君には、いつか付き合って欲しいと言われているし。


ここは正直に話すしかないかもしれない。


そう思って全てを話し始めると。


崎田君の可愛い顔が、次第に険しくなっていった。
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