私たちの六年目
置けない距離
「何? このカレー。すごく美味しいんだけど」


「でしょう? 僕、ここのカレーが学生の時から大好きでよく通ってたんです。

菜穂さんに絶対食べさせてあげたかったんだ」


ラーメン屋なのに、なんでカレーを注文するのか不思議だったけど。


スパイシーかつ旨みがあって、これだけ味に深みがあったら納得。


「崎田君が連れて行ってくれるお店って、どこも新鮮で面白いよね」


「以前は飲みに連れて行ってくださいって言ってましたけど。

最初から僕が行きたいお店に誘えば良かったんですね」


崎田君とはこうして何度かご飯を食べるようになった。


崎田君と行くお店は、私が今まで行ったことがないところばかりでとても楽しかった。


ちなみに毎週恒例の金曜の飲み会は、もう2回も欠席している。


もともと集合場所が、自宅からも職場からも遠いし。


私は土曜も仕事だから、断るのはそれほど難しくなかった。


聞けば、梨華もずっと欠席しているらしく。


三人では、あまり盛り上がっていないそうだ。


もしかしたら、近々この飲み会自体が無くなるかもしれない。


そうしたら年に数回、同窓会程度に会う関係になっていくのかな……。


それも、いいのかもしれない。


社会人になっているのに、どこか学生気分が抜けない私達だったから。


もうそろそろ、大人にならなくちゃ……。
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