私たちの六年目
「守や菜穂(なお)が言いたいことは、よくわかるよ。

私だって少し前まで、不倫なんて絶対ダメだって思ってたから。

でも、好きになっちゃったんだもん。

私も彼も、どうしても惹かれて……。

いけないってわかってても、会うのやめられない……」


そう言って、目を潤ませる梨華。


私はそんな梨華を、複雑な思いで見ていた。


その時だった。


「なあ……」


それまで黙っていた秀哉が、静かに口を開いた。


「そんなにお互い好きなら……。

奥さんと別れて、結婚しようって話にはならないのか?」


秀哉の顔は、なんだか強張っていて。


その声色からも、動揺している様子がよく伝わってきた。


「そんな話にはならないよ。

奥さんへの気持ちは冷めていても、彼は二人のお子さんのことを大切に思ってるの。

子供達は、お父さんもお母さんも同じくらい大好きだし。

その関係を壊すなんてこと、彼にはどうしても出来ないのよ……」


「なんだよ、それ……。

その男、ずるくないか?

自分の家庭も梨華ことも、両方手に入れようなんて勝手過ぎる。

梨華のことは遊びで、都合のいいように利用してるとしか思えない!」


握りしめた秀哉の手は、怒りで震えていて。


そんな秀哉を見た後、梨華はふぅと長い息を吐いた。


「そうだね、ずるいよね。


でも、仕方ないの……。


惚れた弱みだから……」
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