私たちの六年目



「ちょっと、秀哉。もうやめなよ。飲み過ぎだって」


そう言ってグラスを取り上げるようとするけど、秀哉はグラスを口から離さない。


「……うるさいな、菜穂。俺のことはほっといてくれよ」


そう言って、また煽るようにお酒を飲む秀哉。


そんな秀哉を見ながら、私は大きな溜め息をついた。


あの後、雰囲気が悪くなってしまった私達は、とてもじゃないけど飲み会を続けられる状況ではなく。


梨華が帰った後、すぐに解散となってしまった。


私は帰り道が同じ方向の秀哉と、途中まで一緒に歩いていたけど。


秀哉が突然地下にあるショットバーに入って行くから、つい私も付いて来てしまったのだ。


「お前、明日も仕事だろう?

仕事に響くし、もう帰れって」


そう話す秀哉に、私は首を横に振った。


「いやよ、ほっとけない。このままあんたを一人になんか出来ない。

まだ飲むって言うなら、私も付き合うから。

すみません。同じのをもう一杯」


カウンターに立つマスターに伝えると。


「相変わらずだな、菜穂は」


そう言って、秀哉は少しだけ口角を上げた。
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