私たちの六年目
「なんでなんだろうな……」


それはこの店に入って、20分くらい経った頃だった。


それまで静かに飲んでいた秀哉が、ボソッと呟いた。


「どうしてよりによって既婚者なんだよ……」


秀哉の声は、悲しみに満ちていた。


「普通に恋人が出来たんなら、ちゃんと祝福出来た。

でも……。

不倫だったら、絶対に認めることなんか出来ない。

どうにかして、やめさせたいって思う」


それは私も同じ気持ちだけど。


さっきのあの梨華の顔は、もうすっかり覚悟を決めている感じだった。


あれはきっと、誰が何を言ったところで聞く耳を持たないだろう。


「どうしていつも梨華はああなんだろう……」


「うん……」


「どうして不毛な恋ばっかりするんだろう……」


「うん……。そうだね……」


「そんなんだから、俺は……」


秀哉は……。


梨華のことを、


ずっとあきらめられない。

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