ビターのちスイート
その言葉に、杏奈の顔に笑顔が浮かぶ。
「ホント? じゃあ、急いでお風呂入って寝なくっちゃ」
言うが早いが、杏奈は立ち上がり、お風呂場へと駆けていく。
「杏奈?」
「私、幸弘と一緒に行きたいところがあるの。だから、早く寝て昼前には起きなくちゃ。いいでしょ?」
「……あ、ああ」
久しぶりに会った恋人たち。仲直りもしたことだし、と思っていた幸弘は、出鼻をくじかれ苦笑い。
しかし、杏奈はそんな幸弘には気づかず、いそいそと入浴を始めたのだった。
そんな杏奈がお風呂から上がると、すでに幸弘は夢の中。
「……幸弘も寝てなかったよね」
久しぶりに会ったとき、幸弘の目の下にはクマが浮かんでおり、目も充血していた。
自分と連絡が取れなかったことも、寝られなかった要因のひとつになっていたんだろうなと思い、杏奈は切ない気持ちを覚える。
幸弘の横に横たわり、杏奈はそっと幸弘の前髪を上げ、額にそっとキスをした。