【完】好きよりもキスよりも…
「なんかあの映画のワンシーンみたいー!」


甲板の先端の方に近づくと、新條は、風に目を細めながらもはしゃいでそんなことを言う。
その姿が可愛くて、オレは新條の後ろに立った。


「じゃあ、オレが後ろから抱き締めてあげるよ」


お約束過ぎる行動だけど折角の旅行だし、この際本当に新婚さん気分を満喫してしまおうなんて実は計画しちゃってるオレ。
恥ずかしいでしょ!って抵抗するかと思った新條も満更でもないみたいだし、問題ないっしょ?


動き出した遊覧船は、結構なスピードで走っていて。
元々雲が動くくらい風があったから、甲板で風を受けているとさすがに寒い。
でも、新條がオレにぴったりくっついて嬉しそうに、目の前に広がる景色を指差してて。
新條の体温を感じてれば、船室の暖房なんていらないって思えちゃう。
新條が寒いって言い出したら考えようかな…。


「あやちゃん!寒くない?」


またまたオレの考えてることをいとも簡単に言葉にしてくれちゃう朱莉サンは、オレに抱き締められたまま、首だけをオレの方に向けて聞いてきた。


「しんじょーがいるから平気だよ」


キスしたいのを我慢して、そう微笑むと、新條はじぃっとオレの顔を見てる。


オレ、またなんか変な顔してるのかな?
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