【完】好きよりもキスよりも…
「ねぇ…?部屋のお風呂じゃ…ダメ?」
耳元で囁けば、ピクンと震えて首筋まで真っ赤に染まるのが可愛い。
でも、流されないぞって言うみたいに首をフルフルと振って、新條はオレを振り返るようにして見上げてきた。
「…っ!折角おっきな風呂があるのに、なんでよ!絶対に大浴場に行く!」
だって…大浴場って混浴じゃないじゃない?
そうは思うものの。
オレの腕に収まりながらもプイッとそっぽを向く新條に、さすがのオレのお手上げ状態。
だって、大きなお風呂に行きたいだけなら、きっと新條はオレの腕をすり抜けてでも一人で行ってしまうから。
だけど…今、それをしないってことは…。
「ん。分かった。じゃあ、一緒に行こっか?」
本当は大浴場なんて、そんな人気の多い所には新條を行かせたくないんだけど。
だって、例え同性とは言え、純粋にお風呂を楽しまないで、邪な視線を向けてくるヤツは沢山いると思う…くらい新條は可愛いから…。
そして何より、お風呂あがりの色っぽい新條を他の男の目に触れさせるなんて、絶対許せない。
でも……。
「うん!じゃ、行こ!あやちゃん!」
そうやって、微笑んでくれる新條が見られるなら、オレはそれが一番だから。
まぁ、だったら、せめてお風呂あがりの新條はオレがガードすればそれでいっか、なーんて…ちょっと我ながら、腹黒くなってマス。