【完】好きよりもキスよりも…
学校行事での旅行は、最初から二人きりになることなんて期待してなかったから、小さな時間を見つけては、他の連中の目を掠めるようにして存在を確かめてたけど。
イツメンとは言え、私服で、しかも気軽でいられるオレ達の初めての旅行。
心地良いけど単調な出来事を繰り返す日常では、触れられなかったお互いの場所。
気付けなかった想いや気持ち。
…ねぇ、自惚れだって笑ってくれてもいいよ。
だけど…もし本当なら、凄く嬉しい。


「今日は、しんじょーが全然足りてないから、オレ泣いちゃうかも?」


なかなかベランダから中に入って来ようとしない新條へと。
少しだけ淋しそうな顔をしてそう呟くと。


「…っ!…そんなコト言わないでよ!…お互い様でしょー?」


なんて言って、物凄い勢いでベランダからソファーまでの距離を突進してきた。
絶対駆けつけてくれるって分かってて言ってるオレ。
…ほんと、ごめんね?
でも、それよりも、今は…。



新條の補給が先決。
これから遊覧船に乗りに行くって行ってたから。
それまでの時間を有効利用しなくちゃね。
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