【短】青空なんて、いつもみえない。
みえないけど。



キュッ



バッシュが床にこすれる音が、体育館いっぱいに響いた。



ぽた、と耳の横をしずくが伝う。



はっ、とはく強い息はこだませず、バンと叩きつけられたボールが笑うように跳ねた。



ボールを追い越さず、離さず、体勢を低くして走る倉山(くらやま)くんは、前を見据えてしっかりとした足どりをしていた。



こんなに上手にドリブルをするひとを、倉山くん以外には知らない。



倉山くんがちらりと、キャプテンの原町(はらまち)くんをみると、原町くんは走り出す。



シュッ、と音がなりそうなほど綺麗に指から離れると、原町くんへと大きな弧をえがいて……。これが正しいパスなんだ、と知った。



そのまま、原町くんがシュートを決める。



倉山くんは駆け寄ると、「よっしゃ」と真っ白い歯をみせ、ガッツポーズをした。
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