【短】青空なんて、いつもみえない。
……1歩。近づいて、後悔した。
キラと光ったのだ。彼の瞳が、山吹色に染まって。
足音がたってしまい、彼がこちらを振り向く。
逃げ出してしまいたかったが、できない。
もう、逃れられなかった。
せめて、空の写真を撮るつもりで近寄った、ということにしたくて、スマホを目の前に構える。
ザッ、と彼がこちらに足を向け、歩み寄ってくる。
『こうしたら?』
私の横に並び、身をかがめて、スマホを持つ私の手に、手を添えて。
顔を覗きこみながらそんなことを言われて、写真の撮り方を教えてもらって、ぷつりと思考回路が途絶えた。
『……あ、知らないひとにやられたら困るか』
申し訳なさそうに眉を下げる姿さえも、まぶしい。
きっとこれが、かっこいいの意味。