【短】青空なんて、いつもみえない。



……1歩。近づいて、後悔した。



キラと光ったのだ。彼の瞳が、山吹色に染まって。



足音がたってしまい、彼がこちらを振り向く。



逃げ出してしまいたかったが、できない。



もう、逃れられなかった。



せめて、空の写真を撮るつもりで近寄った、ということにしたくて、スマホを目の前に構える。



ザッ、と彼がこちらに足を向け、歩み寄ってくる。



『こうしたら?』



私の横に並び、身をかがめて、スマホを持つ私の手に、手を添えて。



顔を覗きこみながらそんなことを言われて、写真の撮り方を教えてもらって、ぷつりと思考回路が途絶えた。



『……あ、知らないひとにやられたら困るか』



申し訳なさそうに眉を下げる姿さえも、まぶしい。



きっとこれが、かっこいいの意味。
< 3 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop