【短】青空なんて、いつもみえない。



『……知ってる。私、ちゃんとあなたのこと知ってるよ』



震える唇で言葉を紡ぐと、彼はへらりと目を細めた。



『ありがとう。



でも一応、自己紹介。俺は、倉山信太(しんた)』



倉山、信太……と頭のなかで唱える。



うん、やっぱり、知ってる。



このひとは、学校の人気者だ。



バスケ部の、イケメンだと騒がれている。



私は、そのような女子と一緒になって騒ぐようなタイプじゃない。



でも、彼の噂は毎日のように耳に入ってきていた。



だから、初めて面と向かった、という気はあまりない。



『私は』



というと、『しーっ』と、口元に人差し指をもってこられた。



距離の近さに、ドキリと心臓が跳ねた。
< 4 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop