【短】青空なんて、いつもみえない。
『……知ってる。私、ちゃんとあなたのこと知ってるよ』
震える唇で言葉を紡ぐと、彼はへらりと目を細めた。
『ありがとう。
でも一応、自己紹介。俺は、倉山信太(しんた)』
倉山、信太……と頭のなかで唱える。
うん、やっぱり、知ってる。
このひとは、学校の人気者だ。
バスケ部の、イケメンだと騒がれている。
私は、そのような女子と一緒になって騒ぐようなタイプじゃない。
でも、彼の噂は毎日のように耳に入ってきていた。
だから、初めて面と向かった、という気はあまりない。
『私は』
というと、『しーっ』と、口元に人差し指をもってこられた。
距離の近さに、ドキリと心臓が跳ねた。