【短】青空なんて、いつもみえない。
『園田涼香(そのだすずか)さん……だよね』
小さく首を傾けて言うから、言葉もでない。
彼くらいに有名なひと、私の名前なんか覚えていないと思っていたのに。
『園田さんの描いた絵が、文化祭で飾られてたでしょ?』
こくりとうなずく。
そのときに描いた絵は、雲で覆われた灰色の世界から、かすかに光がさし、その近くを5つのしゃぼんだまがふわふわととび、そのうちの1つがパチンと消えたようすだ。
絵の具で描くのは難しくて苦労した。
どうしても、暗くなるからだ。
灰色のところを塗るとき、水が多すぎると雲だとわかってもらえない。雲は普通、ゆったりと流れるようなものだけれど、流れる様子がくっきりとみえるから、少し濃くしないと存在がないように思えてしまう。