【短】青空なんて、いつもみえない。
*
「倉山くん」
部活が終わって、校門を出たところで、彼を呼び止める。
「絵、完成したの」
スケッチブックを開いてみせると、「わぁ」と声をもらした。
「すごい、これ……身体の線だけじゃなくて、表情も、汗も、目線も、全部丁寧に描かれてる……」
まるで誰かに説明するようなくちぶりに、思わずふっと笑った。
「あー、俺、やっぱ園田の絵、すきだ」
屈託のない笑顔で言われ、ドクンと鼓動がはやまり、目に力が入った。
私、いつからこんなに欲張りになったんだろう。
もっともっと、倉山くんを描きたいと思うなんて。