没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます！

ーーー貴族の娘が医者として働くなんて

ーーー俺たちが暮らす第四区で診療所を開く？貴族の遊びに付き合っている暇はねえよ

ーーー医者をなんだと思っている


今でこそ第四区の人とは仲もいいし、助け合って日々を生きているけれどはじめはそうじゃなかった。

たくさん罵倒されたし、にらまれることもあった。
それでも私は諦めなかったし、徐々に受け入れてくれるようになった第四区の人々が私は大好きだ。

みんないい人ばかりだし、貧しくても必死に働いて生きている。
なのにここに住む女はみんな身売りしている？ふざけるな。


「･･･せ･･･よ」

「？」


「取り消して、今すぐ！私の大好きな第四区の人たちを馬鹿にしないで！！」

ﾊﾟｧﾝｯ

私の叫び声とともに、乾いた音が診療所に響いた。

「シエルさんっ」


「･･･」

我慢の限界だった私は薄茶色の髪をした青年の頬をたたいた。
･･･この人たちがどれくらいの身分かは知らないけれど、下手したら牢に入れられる。でも後悔はしていない。



「っ、あなたっ、なんてことを！･･･大丈夫ですか？」

銀髪がもう一人の青年を心配してる。心配の仕方を見ている限り、薄茶色の髪の青年の方が身分が高いのだろう。


一方私にビンタされた青年は無言だった。普通に甘やかされた貴族のお坊ちゃんならぶち切れていそうだけれど、彼は無言なだけでなく無表情だった。
何を考えているのかもわからない。怒っているのか、驚いているのか･･･


「シエルさん、患者さんが来ました･･･」

無言の時間がしばらく流れたけれど、ハルの一言で空気が変わった。


「患者さんが来たそうなので、帰ってください」

青年二人に冷たく告げると、銀髪が反論する。

「我々も患者だとはじめに言ったでしょう？」

「どう見ても医者にかかる人にみえない。それに第四区の人たちを愚弄するような人を診察する義理はない」


「なっ、」

銀髪は言い返すこともできないようだった。


私はずっと椅子に座っていたけれど、立ち上がり二人の背中を押して診療所の外に出す。
そしてーーー


「患者でないなら帰ってください。あとビンタについては謝るつもり、ありませんから」


それだけ言うと私は彼らの鼻先で診療所のドアを閉めてやった。