没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます！

「ではそれをくれ」

「わかりました。ではブレンドしてくるのでこれでも飲んで待っていてください」

そういって私は青年にティーカップを差し出した。

「･･･これは」

「オレンジピールのハーブティーです。リフレッシュ効果がありますから飲んでください。ああ、毒なんて入っていませんよ」


（貴族の子息なら毒を警戒するのは当たり前か、）

ティーカップの中身を見つめたままの青年を横目に横にある調合部屋にいく。
この部屋には天井まで届く棚が壁一面に広がっており、薬草やハーブなどが所狭しと並んでいる。

患者さんを診察したあとは大抵ここで薬を調合している。
彼のように不眠を訴えるものは少なくない。だから不眠を和らげるハーブティーなら得意分野だ。


（彼は仕事もかなり忙しそう、ということは毎日遊んでいる道楽者ではない･･･だけど詳しいことはわからないから･･･）

あーでもないこーでもないと考えながら何をブレンドするか考える。

「よし、二種類作ろう」


二種類のハーブティーを調合したあと、紙にハーブティーの入れ方を書く。きっと彼にもお付きの者か侍女がいるからその人に渡してもらえばいい。



「お待たせしました･･･」

先ほどの部屋に戻ると、青年は窓辺でうとうとしていた。しかし私が来たことがわかったようで目を開ける。

「ごめんなさい、起こしました？」

「いや･･･俺は寝かかっていたのか･･･？」

「どうやらそのようですね。ところでこちらがハーブティーです」

「ああ、すまない･･･二つあるのか？」

「ええ、説明させていただきます」


おそらくちゃんとハーブティーを飲んだことがほとんどないであろう青年に、種類や効果、飲み方を教える。


一つ目はカモミール。不眠に効くことで有名なこのハーブティーは寝る前に飲むことをおすすめする。

二つ目は先ほど青年に渡したオレンジピール。どうやら先ほどの分は飲み干したようでティーカップは空っぽだった。これは不安を和らげたり、リフレッシュ効果があるので仕事中の休憩にいいだろう。