没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
「最後にこれを」

一通り説明したあと、先ほど書き上げた紙を渡す。

「なんだ、これは?」

「ハーブティーの入れ方を書いたものです。いつもお茶を入れてくださる方に渡してください。その方法が一番効果を得やすいので」

「わかった」

青年は頷くと、紙をポケットにしまった。
そしてお代を私に渡す。


「どうも。では終わりましたのでとっとと帰ってください」

一秒でも早くここから出て行って欲しくて、しっしと手を振る。

「やはり貴族へのあたりがきついな。助手の少年にはそんなこともないのに」

「ハルは私の弟子でもはや家族同然ですから・・・それよりなぜ彼が貴族だと?」

「・・・なんとなくだ」

明らかになんとなくではないだろうが、早く帰って欲しいので追求はしない。


「それでは、もう来ないでくださいね。あとはオーガストで十分対応できます」

それだけ言って追い出すと、ようやく診療所内は静けさを取り戻す。


「まったく・・・休憩時間に診察しなければいけないなんて」

そういえば名前も正確な身分も聞いていなかったなと思いつつ、寝転がる。
まあもう二度と会いたくもないからそれで構わないのだが。



「シエルさん、ただいま帰りました!」

「おかえり」

「・・・?誰か来ていたんですか?」


テーブルの上にあったティーカップを見て、ハルが尋ねてくる。

「ああ・・・この前の貴族が一人でやってきた」

「っ、大丈夫ですか?!何もされていませんか?!」

この前の貴族が来たといった途端、ハルは顔色を変えて尋ねてくる。


「え、うん。不眠らしくてハーブティーをあげただけだし、すぐに帰らしたよ」

貴族嫌いだしね、というとハルは安心したようにため息をつく。

「はあー。よかったぁ」

「なんでそんなに心配するの?何かあっても私が戦えること知っているでしょ?」

「え、まあそうですけど・・・」


あそこまで取り乱したハルは初めて見たかもしれない。珍しいこともあるもんだ。

「とりあえずご飯食べよ」

「そうですね」

そうして私たちは午後からの診察に備えて腹ごしらえをするのだった
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