没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
「おまえがなんと言おうと俺は一人で行く。いいな?」

「・・・わかりました」

セインとしてはまだ沢山の小言を言って、また一人で王都に行くことをやめさせたいのだ。
しかし自分の主であるラシェルにこれ以上反発することができない。


「これからは城を出ることだけは知らせるから。あとこれをしばらくの間お茶として出して欲しい」

「・・・これはハーブティーですか?」

「ああ。例の令嬢がブレンドしてくれた。安眠作用があるらしい」

・・・危険だと言っているのにもらったハーブティーを早速飲もうとするあたり自分の主はバカなのだろうか。しかしそれを言っても聞かないだろう、ここは自分がこっそり毒味するしかない。

「かしこまりました。では失礼いたします」


セインはラシェルから渡された二種類のハーブティーと説明書きの紙を持って退出していった。



臣下が誰もいなくなった執務室でラシェルは静かにため息をつく。

(一体あのハーブティーにどれほどの効果があるのやら・・・)

しばらくの間あのハーブティーを出すようにセインに言ったが、ハーブティーの効果は実のところラシェルはまったく信じていない。しかしイチかバチか試してみようと思いセインに渡したのだ。
それよりもーーー


(今日関わった感じでは本当に貴族嫌いなのだろう。権力に固執するようにもみえなかった。だが相手が王族とわかった途端態度を変えることも大いにあり得る。いや、その方が高いだろう。その証拠に弟はまだ自分の正体をあの女に言っていない)

今のところ毎日楽しんで生きている弟のことを邪魔するつもりはない。弟と自分は仲がいい訳ではないが険悪な仲でもない。
そもそも必要最低限しか関わらないのだ。だがこの先自分や国に刃向かったりするのであれば容赦なく切り捨てるし、王族として問題ある行為をさせるつもりもない。


これからしばらくレティシア子爵家の令嬢とは交流を続け、本心が欲にまみれた黒いものであれば即弟を引き離す。もし王族の地位を虎視眈々と狙う女と弟が結婚すれば、王族も国もたまったものではない。悪い芽は早いうちに摘み取っておくに限る。


悪い芽は成長し大きくなれば、むせかえるほど甘い甘い毒をもたらす悪花にしかならないのだから。
そしてその毒は国の崩壊を招くこともあるーーー
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