没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
「私はね、ずるいやつなの。高尚なことばかりいって言っているけれど、結局婚約したくなかっただけ」
貴族の家に生まれたものに恋愛結婚はほとんどない。政略結婚がほとんどだ。それも、親が子供のことを第一に考えた結婚なら幼なじみや歳の近い人と結婚できるが、ただ自分の家を大きくしたいだけの人ならば、一回り以上も年上の人と結婚させられることもある。
実際に14歳の時に30歳の人と婚約した貴族令嬢を知っている。自分よりも倍年上の人と夫婦生活なんて果たして成り立つのか。
私は結婚相手がどうとかじゃなくて、ただただ自由でいたかった。一度結婚すればもう簡単に出歩いたりできなくなる。
私は自由が欲しいから、婚約ではなく自分が働くことを選んだのだ。
「いいえ、シエルさんは優しいです」
そういうハルの目はとても強い意志を持っていた。その目はあの貴族の青年よりも少し色素の濃い蒼色。
「医者になったのは結婚したくないからってだけなの。不純な動機なんだよ?」
「それでも今は医者という職業に誇りを持っている。そうでしょう?」
「・・・うん」
「それならいいと思いますよ。動機がどうであれ今現在はちゃんと病に苦しむ人々に寄り添っているじゃないですか。それに・・・正直詳しい出自さえ教えていないのに僕のことを二つ返事で弟子にして、今まで何も聞いてこないじゃないですか。優しいですよ、シエルさんは」
「・・・」
「さあ、この話はこれで終わりです。僕はもう帰ります。明日もきっと忙しいのでシエルさんも早く寝てくださいね」
「・・・うん」
それだけ言うとハルは裏口から出て行き、家に帰った。
ハルは現在第四区に住んでいる。最初は実家から通っていたけれど、この診療所に来てから1年が経とうとする頃に第四区で一人暮らしを始めた。
きっと今までは身の回りのことはメイドや侍女、執事たちがやってくれていただろうから一人暮らしはかなり大変だったと思う。それでも今ではすっかり一人暮らしが気に入ったようで、実家にはほとんど帰っていないようだ。
以前ハルに聞くと、実家よりも居心地がいいから、とのことだった。
「・・・私は優しくなんかない・・・」
私の小さなつぶやきは誰にも聞かれることなく消えていった。
貴族の家に生まれたものに恋愛結婚はほとんどない。政略結婚がほとんどだ。それも、親が子供のことを第一に考えた結婚なら幼なじみや歳の近い人と結婚できるが、ただ自分の家を大きくしたいだけの人ならば、一回り以上も年上の人と結婚させられることもある。
実際に14歳の時に30歳の人と婚約した貴族令嬢を知っている。自分よりも倍年上の人と夫婦生活なんて果たして成り立つのか。
私は結婚相手がどうとかじゃなくて、ただただ自由でいたかった。一度結婚すればもう簡単に出歩いたりできなくなる。
私は自由が欲しいから、婚約ではなく自分が働くことを選んだのだ。
「いいえ、シエルさんは優しいです」
そういうハルの目はとても強い意志を持っていた。その目はあの貴族の青年よりも少し色素の濃い蒼色。
「医者になったのは結婚したくないからってだけなの。不純な動機なんだよ?」
「それでも今は医者という職業に誇りを持っている。そうでしょう?」
「・・・うん」
「それならいいと思いますよ。動機がどうであれ今現在はちゃんと病に苦しむ人々に寄り添っているじゃないですか。それに・・・正直詳しい出自さえ教えていないのに僕のことを二つ返事で弟子にして、今まで何も聞いてこないじゃないですか。優しいですよ、シエルさんは」
「・・・」
「さあ、この話はこれで終わりです。僕はもう帰ります。明日もきっと忙しいのでシエルさんも早く寝てくださいね」
「・・・うん」
それだけ言うとハルは裏口から出て行き、家に帰った。
ハルは現在第四区に住んでいる。最初は実家から通っていたけれど、この診療所に来てから1年が経とうとする頃に第四区で一人暮らしを始めた。
きっと今までは身の回りのことはメイドや侍女、執事たちがやってくれていただろうから一人暮らしはかなり大変だったと思う。それでも今ではすっかり一人暮らしが気に入ったようで、実家にはほとんど帰っていないようだ。
以前ハルに聞くと、実家よりも居心地がいいから、とのことだった。
「・・・私は優しくなんかない・・・」
私の小さなつぶやきは誰にも聞かれることなく消えていった。