没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
木々は青々と茂り、どんどん夏真っ盛りに向かっている今日この頃ーーー

珍しく午前中の患者さんが少なく、おひるご飯はノーラさんがリゾットを作ってくれることになった。しかしリゾットに必要なチーズが足りないことが発覚し、急遽私が買いに行くことになったのだ。


「リゾットにチーズがないのは致命的だよな~」

ノーラさんはリゾットを作るときに使うチーズを決めているらしく、このチーズを買ってこいと商品名を書いたメモを持たされた。

かなりおおらかで細かいことは気にしないノーラさんだが、なぜかリゾットのチーズだけはこだわりが強い。しかもこのチーズは第三区にあるお店にまで行かなければならない。

早く行かなければ、リゾットどころか昼食まで食べ損ねることになる。それだけは勘弁して欲しい。


「えーーと、確かここら辺・・・」

幼い頃から第三区に住んではいるが、実家に住んでいた頃は買い物はさせてもらえなかったので、商店についてはあまり詳しくないのだ。
商店のことなら、第四区の方が詳しい自信がある。


ノーラさんがくれたメモには、店の名前と目印も書いてあった。だからもう一度メモを確認していると、

「うわっ、」

「っ、」


ドンッと、誰かと思いっきりぶつかって道で盛大に尻餅をついてしまった。

「すまない、大丈夫か?」

「はい、こちらこそよそ見しててすみませ・・・」

「「あっ」」

謝りながら、顔を上げると目の前にいたのは

「なんで第四区の医者が第三区に」

「そちらこそ第三区に何のようで?」




柔らかな茶髪と、蒼い目が特徴のあの、不眠症の貴族の青年だった。
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