没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
「なぜって私は買い物です」

「へえ・・・意外」


こいつ・・・意外ってどういう意味よ。そりゃ日々の買い物はハルに任せてるけれど、私だって普通に買い物ぐらいするわよ。そこら辺の貴族のご令嬢と一緒にしないで欲しい。
彼女たちは一人で町に出ることも、買い物に行くこともない。買いたいものがあるなら商人を家に呼びつけるからだ。


「意外で悪かったですね。そちらはなぜここに?」

「おまえの診療所に行こうと思った」

「え?じゃあ・・・迷子?」

「ふざけるな。迷子じゃない、ただついでに町の様子を見ようとしただけだ」

「・・・」


まさか町の様子を見ているとは。甘やかされて育てられた貴族のご子息なのかと思っていたけれど、意外とちゃんとしているのかもしれない。
この前一人で診療所に来た時もそうだったけど、第一印象から彼という人物像を少し変えなければならないと感じる。


「それで?買い物は済んだのか?」

「いえ、今からです」

「じゃあ早くしろ。診療所まで俺も着いていく」

「・・・先に行ってくださって構いませんけど。この間と違って私の弟子も今はいるので」

「いや、俺はもう少し町をみたいからおまえについて行く。早く買い物を済ませろ」


前言撤回。普通にわがままな坊ちゃんだ。

町をみたいのに買い物は早く済ませろなんて、横暴にもほどがある。
権力のある貴族の息子だからって調子に乗らないで欲しい。
権力があるのは父親であってあんたじゃないんだから。


しかし彼に何を言っても無駄だろう。大きくため息をつくと私はチーズを買うため店に入ったのだった。

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