没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
店を出ると、店の前であの青年が待っていた。


「遅い」

私をチラリと見た彼は一言そうつぶやくと、診療所に向かって歩き出した。

「お待たせしてすみませんねえ」

(待ってくれなんて誰も言ってないけどな!)


相変わらずわがままな青年に腹が立つけれど、今はそんなことを気にしている場合ではない。
早くこのチーズを持って帰ってノーラさんのおいしいドリアを食べるんだ。


「・・・そういえば」

「?なんだ」

「お名前、聞いていませんでした。呼びにくいので教えてください」

「名前・・・レイだ、レイ」

「わかりました。ではレイ、急がないと昼食が食べられないので走りますよ」

そう言って私は全力で走り出した。

「は?おい!待てよ!!」

レイもそう言いながらも走って着いてくる。


(さあ、箱入りの坊ちゃんは最後まで着いてこられるのかな?)




ーーー


「・・・おもしろくない」

「なにがだ」

途中で息が切れて、ついてこれなくなると思っていたレイは息を切らすことなく私に最後までついてきた。
家に引きこもって体力のないお坊ちゃまではないようだ。


「別に何でもないです・・・ノーラさん、ハルただいま-」

「おかえり、シエルちゃん・・・って?!」

「どうしたんですか、ノーラさん・・・は?」

私がレイを連れて診療所に帰ってきたので二人とも目が点になっている。


「えっと・・・たまたま町で会ったんです。ちょうどここに来ようとしていたみたいで」

「その人ってこの前ハーブティをブレンドしてあげた彼・・・?」

「そうです」

以前レイにハーブティーをあげた時、ノーラさんはいなかったがそのあとに事情は説明していた。



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