没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
父も貴族の中で発言力などないに等しく、助けてくれる仲のよい貴族もいない。

しかし私以外にも妻である私の母と、今年16歳になる妹、さらには少数ながら仕えてくれている住み込みの使用人がいる。

どんなにお金がなくても養っていかなければならない。でも蓄えはごくわずか、このままでは家族全員で心中しなければならない。

10歳にしてそのことを悟った私は、父の知り合いの医者オーガストに弟子にして欲しいと頼み込んだ。


ーーー「オーガストさん、私を弟子にしていただけませんか?」

ーーー「なぜだい?君は貴族の娘だ。貴族の娘は働かないものだろう?」

ーーー「わかっています。このままでは家族そろって心中することになります。なので医者になって少しでも生活費を稼ぎたいのです」

ーーー「医者は簡単な仕事ではないぞ。覚悟はあるのか}

ーーー「あります」

ーーー「いいだろう。今日からおまえは私の弟子だ」


それから16歳になるまでは見習いとしてオーガストの診療所で働いた。
16歳の時にようやく一人前と認められ、自分の診療所を持てるようになった。



「本当はそのまま第一区でお医者さんやれたんでしょ?なのにわざわざ第四区にくるなんて、シエルちゃんも変わり者だよねえ」

「たしかに。ご実家は第三区ですよね?どうしてわざわざここに?」


王都ミミルは中心に王城がそびえ、それを囲むように円形に街が広がっている。
街は四つの地区に分けられており、王城の正門から伸びるメインストリートに面している第一区と第二区はとても栄えている。

第一区と第二区は権力の強い貴族が多く屋敷を構え、財力のある商人たちもすんでいる。
一方第三区は私の実家のように没落した貴族の屋敷や一般市民が多く住む。
さらにこの診療所のある第四区は一般市民の中でも貧しい人が多い。
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