没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます!
オーガストの診療所は第一区にあったが、私が独り立ちすると同時に王宮の専属医師になることが決まった。本当はもっと前から誘われていたらしいが、私が独り立ちするまでは待って欲しいといってくれていたそうだ。


そんなオーガストは城に住み込みになるため、第一区の診療所をたたむことになった。
私はそのままオーガストがやってきた診療所を引き継ぐつもりだったが、あるとき第四区唯一の診療所がなくなるという話をきいた。

第四区唯一の診療所を営んでいたのは高齢のおじいさんで、体力の衰えから診療所をたたむことにしたらしい。

ただでさえ第四区は貧しく、生きていくのに必死な人が沢山いるのだ。
なのに医者が一人もいないなんてさらに大変だ。

貧しいという点でなぜか実家と重なった。
だから放っておけなくて、第四区で診療所を開くことにしたのだ。



「放っておけなくて。だって地区に診療所がないなんて困るでしょ?」

「たしかにねえ。私もシエルちゃんがきてくれて安心したよ」

「王都なのに地区によってこんなに格差があるなんて問題ですよね」

「まあね。でも根本的な問題は力のない私たちには無理な話なのよ。権力ないから」

「・・・権力・・・」

「ん?ハルなんかいった?」

「い。いいえ!なにも」


ミミルの中心に住まう王族や貴族はこの現状を知っているのだろうか。
いや、きっと知らないのだろう。知っていたら毎日のようにパーティーや舞踏会を開くわけがない。

私も一応貴族の端くれだが、社交界デビューさえしていない。
もう庶民と名乗ってもいいレベルだ。
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