一昔前の、中学生活
第八節 男子同士の恋愛トークと…
「いやー、それにしても優のやつ、羨ましいなぁーあの梨々ちゃんからご指名とは!」
帰り道。
梨々の望み通り、優は梨々と一緒に帰った。
家の方向的に、五郎と清和さんが同じということで、その二人が一緒に帰り.....
「ったく、遊びも相手は男、帰り道まで男と二人きり!........幸運の女神様は俺を見放しになられたのでしょうか?」
「ごっ....ごめんね、隣にいるのが俺で.....でも俺ら家も近いことだし......」
「あーあー分かってるよ!別にお前の隣が不満とかじゃねぇんだよ。お前は優や五郎に比べてストレス溜まんねぇからな」
瑠千亜がため息混じりに言う。
確かに五郎といるときは専ら言い合いになるか、五郎の天然発言に瑠千亜がツッコんでるからなぁ.....
優といる時も、俺と梨々だけが知らない例の優の秘密をバラさないように気を遣っているのだろうか。
瑠千亜はやはり、友達思いだから色々と気を使いすぎて疲れることもあるのだろう。
「しかしなぁ.....あれはさすがに驚いたぜ。何、梨々ちゃんって優の事好きなのか?」
瑠千亜が悔しそうな顔をしながら言った。
梨々の行動はかなり大胆だったから、瑠千亜のような鋭い人にはすぐにお見通しなのかな....
「...うーん...どうだろうね......」
本当は梨々の気持ちを知っているけど、梨々は誰にもバレないようにしてきたと言っていたから、俺が勝手に他の人に話してもいいはずがない。
とは言いつつも、友人に嘘をつくのも何だか憚られたので、曖昧な返事しかできなかった。
「.......ふーん......まあ、いいや。.......ところでさ、隼、お前は好きなヤツとかいねーの?」
俺の嘘を見抜きながらも流してくれたと思ったら、今度は唐突に聞いてきた。
「えっ....なっ...何?どうしたの急に!」
「いやー、だってほら、お前ってかなりモテてんのに全然彼女作ろうとしねーじゃん。だから誰か心に決めた人でもいるのかなーと思ってさ。」
「そんなっ.....」
「ま、いるだろうなってのは丸わかりだけど。嘘ついても無駄だぜーお前分かりやすいからな」
「えっ!そっ...そうかなぁ」
「ああ。.....まあ、誰かってことまではなんとなーくしか分かんねぇけどな。」
「何となくでも分かられてるの!?」
「まあな。俺はこういうの、鋭いんで。」
「そっ....ソウデスカ....」
瑠千亜の観察眼が恐ろしい.....!
一体、どこまでバレてるのか.....
と言うか、俺の想いは、バレてはいけないものなのに.... .
バレたら、梨々の恋の邪魔をするかもしれないから.....
「だ...誰にも言わないで下さい......」
「んぁ?勿論、そんな悪趣味じゃねーよ。誰にも言わねぇよ。......ただ、もう、わかってる人はいるかもだけどな。」
「ええっ!?」
「いや、お前のその分かりやすさでいって気づかない方が珍しいっつーの!!!」
「そっ.....ソウデスカ...」
そんなにわかりやすいかな、俺.....
でも....さっきの感じだと、梨々も多分こういう話題には鈍い方だ。
だから、きっと梨々にはバレてないだろう。
でも....
「ねぇ、このこと、優は気づいてると思う!?」
そう。
優にこそ、1番気づかれてはいけない。
優が気づいてしまえば、梨々がどんなに頑張って優に近づこうとしても、きっと優は......
「ああ、優こそが真っ先に気づいただろうなぁ。」
「えっ!?」
躊躇いなく言う瑠千亜の言葉にショックを隠せない。
「だってオメー、優は何年お前の側にいたと思ってるんだよ?会って数日の俺らが気づいて、会って7年近く経ってる優が気づかない訳ないだろー」
「.........」
「それに、アイツ多分かなり鋭いしな、こーゆーの。」
やっぱりそうか......
どうしよう.....
これだと、俺のせいで.....
「でもまあ、優はお前の気持ち知ってようが知らなかろうが、結果は同じにするだろうけどな。......ほら、さっきも話題になってたけど、優には.....長年思い続けてる人がいるからさ」
瑠千亜の言葉にハッとした。
そういえば......
そうだ、優には.......
「まあ、それが梨々ちゃんって可能性も無きにしも非ずだろ?もしそうだったら、お前が梨々ちゃんをどう思ってようが関係なく梨々ちゃんに告られたら優はオッケーするだろうし。.......まあ、あくまで可能性の話で、断言はできねーけど。今の話全部な。」
瑠千亜が俺の考えていたことを見透かしたかのように言う。
そっか.....
優の好きな人が、もし梨々だったら........
いくら俺と被ったからと言って、身を引くような男じゃない。
自分の気持ちに正直に生きてるのが優だ。
だからもし梨々が優に告白して、梨々も優を好きだとわかったら、きっと優は全力で梨々を幸せにするだろう。
「そっか....確かにそうだよね!ありがとう瑠千亜!」
瑠千亜のお陰で気づけたことが沢山あった。
モヤモヤしていたものが、少しは軽くなった気がする。
「......おう。まあ、もし優の好きな奴が梨々ちゃんだったら、お前は勝ち目のない優のライバルになっちまうがな。」
「そうだねー.......まあ、それはしょうがないよ。誰が誰を好きになるかなんて、誰も決められないことだしね」
「そうだな。
.....フハッ、想像してみたらちょっと愉快だぜ!あーんなにモテモテの隼クンが、本命の女子は手に入れられないってのもな!」
「瑠千亜、ヒドイなー....」
「フンッ、少しは恋愛で痛い目見なさい!お前らばっかりモテやがって、ズルいんだよーーー!!!」
「瑠千亜だってきっとモテてるよ」
「ケッ!テキトーなこと言いやがって!」
「そういえば瑠千亜は?」
「あんだよ?」
「好きな人!いないの?」
「はぁっ?」
ずっと俺たちの話題ばっかりだったけど、そういえば瑠千亜の恋愛話は聞いたことがない。
「俺は..........」
急に瑠千亜の声のトーンが下がった。
俯いた瑠千亜の顔に、夕焼けの影がかかる。
「......どーせ俺は目下望みなしだよ............みんな、女の子はお前らみたいなのに持って行かれる.......」
ボソボソと呟くように瑠千亜が言う。
「でも、いいんだ。.......あいつは.....あいつらは、きっと本気で結ばれることはないから.......」
顔に影を落としたまま瑠千亜が言う。
「えっと........」
「まあ、お前には分からねぇか!ちょーっと複雑だしな、この辺!
まっ、今の話は無かったことにしてくれ!」
「えっ、そんな.....」
「それより、五郎と小春にテレビ電話してみねぇ!?アイツらも二人きりで帰りやがって!ぶち壊したろーぜ!!!」
「........瑠千亜、本当そういうの好きだよね......」
「当たり前だ!! あんなモテモテリア充予備軍は邪魔してしかるべし! 」
「そんな堂々と正論っぽく言っても.......」
「いいからいいから!ほら!」
なぜか誇らしげに言う瑠千亜には、さっきまでの暗い影はもう見られなかった。
ほんとに俺は鈍感で、瑠千亜の状況や心境は深くは読めなかったけれど、きっと瑠千亜も誰かに恋をしていて、沢山悩んでいるのだろう。
優も誰かに恋をしているみたいだし、梨々も優一筋に頑張っている。
みんなそれぞれ想いを抱えていて、それぞれ必死で頑張っているんだ。
俺も、自分の好きな人を幸せにできるように.....梨々が少しでも優に近づけるように、頑張らなきゃ。
そう決めた時、瑠千亜はすでに携帯のテレビ電話機能を起こしていた。
「おーい!もしもし聞こえるかー!?」
瑠千亜の元気な声が響いた。
「おっ!繋がった!!!ほら、隼も覗いてみろよ!」
瑠千亜に手招きされて、携帯の画面を覗き込む。
そこには五郎と清和さんが苦笑いしながら映っていた。
『全く、本当いつも突然なんだから!隼くん!迷惑だったら別にこいつの言うことなんて聞かないでさっさと帰っちゃっていいのよ!』
画面越しに、呆れ顔の清和さんが映る。
「迷惑なんかじゃないよ!瑠千亜と帰るの、結構楽しいし!」
「結構ってなんだよ結構って!」
画面を挟んで4人の笑い声が響く。
オレンジ色の夕焼けがその声を包む。
5月の暖かい太陽は、山へと沈み楽しかった一日の終わりを告げる。
こんな日が、これからも沢山くるといいな。
みんなで遊んで、楽しんで、こうして笑って過ぎてゆく。
そんな中学生活を送って行きたい。
心から、そう思えるあるゴールデンウィークの夕方だった。
………………………
「全く、こんなに楽しそうにして。本当無邪気なんだから」
黒く塗られた窓からは、外の光はごく細く差し込まれるのみである。
窓の外の夕焼けが日の沈みを告げたことも知る術のないこの漆黒の夜に近い部屋は、天井の薄暗いピンク色のライトが照らす。
ミラーボールがピンク色の光を受けて微かに揺れる。
大きなシングルベッド。
闇に包まれた人影が2つ。
そこには愛を確かめる行為が、確かにあった。
「まあ、何せ中学に入ってから初めて皆で遊ぶのが実現した日だ。多少てんしょんが上がっていてもおかしくはない。」
「フフッ、あなたがテンションっていうと、なんか慣れてないみたいよ。」
「仕方なかろう。俺は横文字が苦手であるからな。しかも、てんしょんという言葉は本当は物理用語で糸の張力のことであって.......」
「わかったわかった。あなたが博識で古典を重んじるのは大いに尊敬するところよ。」
「それを言うなら俺は貴殿を尊敬するぞ。こんな出会って1ヶ月と経たない男に身体を許すとは.......」
「魅力的なのが悪いわ.......」
「それは俺のことか?それとも自身のことか?」
「聞かなくてもわかることを聞かないでちょうだい。さ、ほら、続きをしましょう?.......私、もう欲しくて欲しくて........」
「........全く、貴殿という人は............歯が立たないっ........」
最後の男のセリフが、切羽詰まっていることに女は満足した。
またこうして、愛の在り処を探すのね..........
私とあなた、同じ人種よ.........
愛を知る方法はいくらでもあるわ。
その選択が、たまたま一緒だっただけ。
最後にそう思ったきり、女は快楽の深海へと引き込まれ、思考回路が閉ざされた。
きっと......私たちのこんな姿を見たら、あの純粋な友人たちは驚くでしょうね........
でも....どうか汚れないで......
愛の探知が終わったあと、女はそう思ったのだった。
帰り道。
梨々の望み通り、優は梨々と一緒に帰った。
家の方向的に、五郎と清和さんが同じということで、その二人が一緒に帰り.....
「ったく、遊びも相手は男、帰り道まで男と二人きり!........幸運の女神様は俺を見放しになられたのでしょうか?」
「ごっ....ごめんね、隣にいるのが俺で.....でも俺ら家も近いことだし......」
「あーあー分かってるよ!別にお前の隣が不満とかじゃねぇんだよ。お前は優や五郎に比べてストレス溜まんねぇからな」
瑠千亜がため息混じりに言う。
確かに五郎といるときは専ら言い合いになるか、五郎の天然発言に瑠千亜がツッコんでるからなぁ.....
優といる時も、俺と梨々だけが知らない例の優の秘密をバラさないように気を遣っているのだろうか。
瑠千亜はやはり、友達思いだから色々と気を使いすぎて疲れることもあるのだろう。
「しかしなぁ.....あれはさすがに驚いたぜ。何、梨々ちゃんって優の事好きなのか?」
瑠千亜が悔しそうな顔をしながら言った。
梨々の行動はかなり大胆だったから、瑠千亜のような鋭い人にはすぐにお見通しなのかな....
「...うーん...どうだろうね......」
本当は梨々の気持ちを知っているけど、梨々は誰にもバレないようにしてきたと言っていたから、俺が勝手に他の人に話してもいいはずがない。
とは言いつつも、友人に嘘をつくのも何だか憚られたので、曖昧な返事しかできなかった。
「.......ふーん......まあ、いいや。.......ところでさ、隼、お前は好きなヤツとかいねーの?」
俺の嘘を見抜きながらも流してくれたと思ったら、今度は唐突に聞いてきた。
「えっ....なっ...何?どうしたの急に!」
「いやー、だってほら、お前ってかなりモテてんのに全然彼女作ろうとしねーじゃん。だから誰か心に決めた人でもいるのかなーと思ってさ。」
「そんなっ.....」
「ま、いるだろうなってのは丸わかりだけど。嘘ついても無駄だぜーお前分かりやすいからな」
「えっ!そっ...そうかなぁ」
「ああ。.....まあ、誰かってことまではなんとなーくしか分かんねぇけどな。」
「何となくでも分かられてるの!?」
「まあな。俺はこういうの、鋭いんで。」
「そっ....ソウデスカ....」
瑠千亜の観察眼が恐ろしい.....!
一体、どこまでバレてるのか.....
と言うか、俺の想いは、バレてはいけないものなのに.... .
バレたら、梨々の恋の邪魔をするかもしれないから.....
「だ...誰にも言わないで下さい......」
「んぁ?勿論、そんな悪趣味じゃねーよ。誰にも言わねぇよ。......ただ、もう、わかってる人はいるかもだけどな。」
「ええっ!?」
「いや、お前のその分かりやすさでいって気づかない方が珍しいっつーの!!!」
「そっ.....ソウデスカ...」
そんなにわかりやすいかな、俺.....
でも....さっきの感じだと、梨々も多分こういう話題には鈍い方だ。
だから、きっと梨々にはバレてないだろう。
でも....
「ねぇ、このこと、優は気づいてると思う!?」
そう。
優にこそ、1番気づかれてはいけない。
優が気づいてしまえば、梨々がどんなに頑張って優に近づこうとしても、きっと優は......
「ああ、優こそが真っ先に気づいただろうなぁ。」
「えっ!?」
躊躇いなく言う瑠千亜の言葉にショックを隠せない。
「だってオメー、優は何年お前の側にいたと思ってるんだよ?会って数日の俺らが気づいて、会って7年近く経ってる優が気づかない訳ないだろー」
「.........」
「それに、アイツ多分かなり鋭いしな、こーゆーの。」
やっぱりそうか......
どうしよう.....
これだと、俺のせいで.....
「でもまあ、優はお前の気持ち知ってようが知らなかろうが、結果は同じにするだろうけどな。......ほら、さっきも話題になってたけど、優には.....長年思い続けてる人がいるからさ」
瑠千亜の言葉にハッとした。
そういえば......
そうだ、優には.......
「まあ、それが梨々ちゃんって可能性も無きにしも非ずだろ?もしそうだったら、お前が梨々ちゃんをどう思ってようが関係なく梨々ちゃんに告られたら優はオッケーするだろうし。.......まあ、あくまで可能性の話で、断言はできねーけど。今の話全部な。」
瑠千亜が俺の考えていたことを見透かしたかのように言う。
そっか.....
優の好きな人が、もし梨々だったら........
いくら俺と被ったからと言って、身を引くような男じゃない。
自分の気持ちに正直に生きてるのが優だ。
だからもし梨々が優に告白して、梨々も優を好きだとわかったら、きっと優は全力で梨々を幸せにするだろう。
「そっか....確かにそうだよね!ありがとう瑠千亜!」
瑠千亜のお陰で気づけたことが沢山あった。
モヤモヤしていたものが、少しは軽くなった気がする。
「......おう。まあ、もし優の好きな奴が梨々ちゃんだったら、お前は勝ち目のない優のライバルになっちまうがな。」
「そうだねー.......まあ、それはしょうがないよ。誰が誰を好きになるかなんて、誰も決められないことだしね」
「そうだな。
.....フハッ、想像してみたらちょっと愉快だぜ!あーんなにモテモテの隼クンが、本命の女子は手に入れられないってのもな!」
「瑠千亜、ヒドイなー....」
「フンッ、少しは恋愛で痛い目見なさい!お前らばっかりモテやがって、ズルいんだよーーー!!!」
「瑠千亜だってきっとモテてるよ」
「ケッ!テキトーなこと言いやがって!」
「そういえば瑠千亜は?」
「あんだよ?」
「好きな人!いないの?」
「はぁっ?」
ずっと俺たちの話題ばっかりだったけど、そういえば瑠千亜の恋愛話は聞いたことがない。
「俺は..........」
急に瑠千亜の声のトーンが下がった。
俯いた瑠千亜の顔に、夕焼けの影がかかる。
「......どーせ俺は目下望みなしだよ............みんな、女の子はお前らみたいなのに持って行かれる.......」
ボソボソと呟くように瑠千亜が言う。
「でも、いいんだ。.......あいつは.....あいつらは、きっと本気で結ばれることはないから.......」
顔に影を落としたまま瑠千亜が言う。
「えっと........」
「まあ、お前には分からねぇか!ちょーっと複雑だしな、この辺!
まっ、今の話は無かったことにしてくれ!」
「えっ、そんな.....」
「それより、五郎と小春にテレビ電話してみねぇ!?アイツらも二人きりで帰りやがって!ぶち壊したろーぜ!!!」
「........瑠千亜、本当そういうの好きだよね......」
「当たり前だ!! あんなモテモテリア充予備軍は邪魔してしかるべし! 」
「そんな堂々と正論っぽく言っても.......」
「いいからいいから!ほら!」
なぜか誇らしげに言う瑠千亜には、さっきまでの暗い影はもう見られなかった。
ほんとに俺は鈍感で、瑠千亜の状況や心境は深くは読めなかったけれど、きっと瑠千亜も誰かに恋をしていて、沢山悩んでいるのだろう。
優も誰かに恋をしているみたいだし、梨々も優一筋に頑張っている。
みんなそれぞれ想いを抱えていて、それぞれ必死で頑張っているんだ。
俺も、自分の好きな人を幸せにできるように.....梨々が少しでも優に近づけるように、頑張らなきゃ。
そう決めた時、瑠千亜はすでに携帯のテレビ電話機能を起こしていた。
「おーい!もしもし聞こえるかー!?」
瑠千亜の元気な声が響いた。
「おっ!繋がった!!!ほら、隼も覗いてみろよ!」
瑠千亜に手招きされて、携帯の画面を覗き込む。
そこには五郎と清和さんが苦笑いしながら映っていた。
『全く、本当いつも突然なんだから!隼くん!迷惑だったら別にこいつの言うことなんて聞かないでさっさと帰っちゃっていいのよ!』
画面越しに、呆れ顔の清和さんが映る。
「迷惑なんかじゃないよ!瑠千亜と帰るの、結構楽しいし!」
「結構ってなんだよ結構って!」
画面を挟んで4人の笑い声が響く。
オレンジ色の夕焼けがその声を包む。
5月の暖かい太陽は、山へと沈み楽しかった一日の終わりを告げる。
こんな日が、これからも沢山くるといいな。
みんなで遊んで、楽しんで、こうして笑って過ぎてゆく。
そんな中学生活を送って行きたい。
心から、そう思えるあるゴールデンウィークの夕方だった。
………………………
「全く、こんなに楽しそうにして。本当無邪気なんだから」
黒く塗られた窓からは、外の光はごく細く差し込まれるのみである。
窓の外の夕焼けが日の沈みを告げたことも知る術のないこの漆黒の夜に近い部屋は、天井の薄暗いピンク色のライトが照らす。
ミラーボールがピンク色の光を受けて微かに揺れる。
大きなシングルベッド。
闇に包まれた人影が2つ。
そこには愛を確かめる行為が、確かにあった。
「まあ、何せ中学に入ってから初めて皆で遊ぶのが実現した日だ。多少てんしょんが上がっていてもおかしくはない。」
「フフッ、あなたがテンションっていうと、なんか慣れてないみたいよ。」
「仕方なかろう。俺は横文字が苦手であるからな。しかも、てんしょんという言葉は本当は物理用語で糸の張力のことであって.......」
「わかったわかった。あなたが博識で古典を重んじるのは大いに尊敬するところよ。」
「それを言うなら俺は貴殿を尊敬するぞ。こんな出会って1ヶ月と経たない男に身体を許すとは.......」
「魅力的なのが悪いわ.......」
「それは俺のことか?それとも自身のことか?」
「聞かなくてもわかることを聞かないでちょうだい。さ、ほら、続きをしましょう?.......私、もう欲しくて欲しくて........」
「........全く、貴殿という人は............歯が立たないっ........」
最後の男のセリフが、切羽詰まっていることに女は満足した。
またこうして、愛の在り処を探すのね..........
私とあなた、同じ人種よ.........
愛を知る方法はいくらでもあるわ。
その選択が、たまたま一緒だっただけ。
最後にそう思ったきり、女は快楽の深海へと引き込まれ、思考回路が閉ざされた。
きっと......私たちのこんな姿を見たら、あの純粋な友人たちは驚くでしょうね........
でも....どうか汚れないで......
愛の探知が終わったあと、女はそう思ったのだった。