一昔前の、中学生活
第八節 すれ違い
※五郎side※
「よっしゃあ!!!とりあえず、1勝したぜ!!!!」
第一試合をなんとかゲームカウント4-1で終わらせた俺らは、仲間の声援と瑠千亜の喜びの声に包まれながらコートから出た。
「おつかれ!お前らよくやったな!」
「すごいぞお前ら!!!一年で、しかも初試合で勝つなんて!」
「しかも相手は団体戦で3位には入る学校の二年だぞ?」
「おめでとう!」
「次も頑張れよ!!!」
コードの外に控えていた先輩方からの賞賛の声が次々と降り注ぐ。
ああ、有り難きことだ。
なんて幸せなのだろう.....「おい、まだ終わったわけじゃねーからな。」
俺がこの恵まれた状況を噛みしめていたというのに、隣のペアの男と言えばここぞとばかりに冷静な一言を入れてきた。
「わかっておる。全く、貴様は情緒も何も無い奴であるな。」
「情緒とか言ってる場合じゃねえんだっつーの!俺らの次の対戦相手はこの学園の三番手のペアだぞ!?気を抜くなよ!」
「なるほど。思いっきり楽しめるだけ楽しめばよいのだな。」
「あ、せんぱーい。こいつ負ける気でいまーす。」
瑠千亜が周りにいる先輩方に聞こえるように言う。
だって仕方なかろう。
誰が片方初心者の1年目ペアが百戦錬磨に近い先輩ペアを打ち倒そうと本気で思えるだろうか。いや、誰も思えるまい。
「まあ、1勝しただけでも十分なんじゃね?」
「次は相手が悪かったな。」
「1点取ることを目標にしてみろよ」
瑠千亜の流言に対して、先輩方は案外冷静な返しをした。
それみろ。
誰も俺達にそれほどの期待などしておらんのだ。
そういった、ルーキーであるからこその奇跡のようなものは俺たちではなく、あの一番手コンビにでも期待して欲しいところだ。
「そんなっ.....確かに簡単に勝てる相手ではないですけど.......」
あからさまに負けを前提とした先輩方の言い方に、瑠千亜は不満を隠せずに呟いた。
「よせ、瑠千亜。悔しいのは分かるが、それが俺らの実力ということだろう。」
「うるせーよっ!分かってるようなこと言うなよ!諦めてたくせに!」
「諦めているのではない。認めているのだ。」
「またお前は屁理屈をっ........!それでもこの学園の代表かよ!」
「代表の中にも上下はあるだろう。その中で俺たちはまだまだ下っ端というだけだ。この学園の中で上を見ればキリがないが、下を見ようとしても同じくらいの数がいるのだ。今はそれだけでも十分とせぬか。」
「そんなんでこれから先勝ち進められるのかよ!」
「落ち着け。まだ緒戦だぞ。焦って一回目から見の丈以上の結果を残そうとするな。」
「.......クソっ........!」
俺に言い負かされた瑠千亜は不機嫌そうに自分たちの陣営へ戻ってしまった。
「.........すみません。折角先輩方が応援に来て下さったのに。そのお陰で勝つことができたのに、あんな態度で。後で注意しておきますから。」
俺らの言い争いを見ていた先輩方に頭を下げて謝る。
「まあ、気にすんなよ。俺も一年の時は同じような気持になったからな。この学園には全国から最強と呼ばれる選手たちが入ってくるんだ。今まで期待されて当たり前、勝って当たり前の奴らがくるんだからな。それなのに、もっと上がいて、自分にはたいした期待がされていないと分かるとああいう風にもなってしまうさ。」
キャプテンの先輩が昔を懐古するかのように言った。
周りの先輩方も異議がないようで、頷いている。
「まあ、こればっかりは初心者のお前には分かりにくい感覚だろうけどよ。今までそれなりのプレーヤーとしてやってきた奴らはきっとみんな同じフラストレーションを溜めてるだろうからさ。それだけはどうかわかってやってくれ。」
ぽん、と俺の肩に手を置いて先輩方は歩きだした。
「次の第二試合、この学園から3ペア出るから、それぞれ分かれて応援しろって他の一年にも伝えておいてくれ。」
振り向いてキャプテンが俺に告げた。
俺は頷いて瑠千亜の元へと向かう。
「どうやら気持ちがずれていたのは俺のほうだったようだな。」
テントに戻ると、明らかにムシャクシャした様子でおにぎりに噛り付いていた瑠千亜がいた。
他にも数名の一年が居たものの、瑠千亜のただならぬ雰囲気に臆して誰も声を掛けられんでいた様子だった。
「すまぬがお前たち、先に第二試合の応援へ行ってくれぬか。2、5、6コートでそれぞれやっているはずだから、分かれて応援してくれ。」
テントの中でボールの空気調節やらリーグ表の確認やらをしていた一年に声をかける。
「隼と優はどうする?あいつらは第三試合あるみたいだけど.....」
「それならアップをさせておけ。もしテントに戻ってきたら第二試合が始まったことは伝えておくから。」
「わかった。」
10人ほどの一年がぞろぞろと動き出す。
「お前らも、お疲れ様。一年代表のうちの一ペアとしてよく勝ってくれたよ。次も頑張れよ」
うちの一人が、テントを後にするときにそう言い残して行った。
俺はこの一言だけでも充分なのだが、きっと隣でおにぎりをやけ食いしているこいつには別の意味で届いているのだろうな。
「おい、あまり食べ過ぎると次の試合に響くぞ。」
残っていた一年が全員掃けたのを見計らって、瑠千亜に声を掛けてみる。
「お前こそ何か食えよ。早朝練だったから腹減ってんだろ。」
「うむ。案外オカンなところがあるのだな。」
「うっせー。いいからとっとと食って応援行くぞ。」
「応援より先に、次の試合について話し合いたいのだが......」
「いいよ。どーせ1点取れればいいんだろ。相手のミスを待てば1点くらい取れるだろ。」
「そう簡単に取れるものではないと思うが.....」
「じゃーどうするんだよ!?どーせ俺らが攻めたって勝てねーしよ!」
「瑠千亜。さっきのことは俺が悪かった。」
完全に先ほどの俺や先輩方とのやり取りで自信を失い、自暴自棄になっている。
突如謝った俺に驚いて、瑠千亜はおにぎりを頬張るのを辞めてこちらを見上げた。
「思えば俺は初心者だからな。始めて2ヶ月で公式の大会に出させてもらっているという状況だけでも満足をしていたのだ。それなのに、まさか緒戦で勝てるとはな。俺にとっては何もかもが上手く行きすぎて恐ろしいくらいだ。」
瑠千亜が座っていたブルーシートの隣へ腰を下ろす。
「隼や優のような初日からいきなり一番手を打ち負かすような圧倒的な実力を持っているわけでもなし。周りの先輩方ほどの大きなプレッシャーを与えられていたわけでもなし。しかし一年として唯二の個人戦ペアとして応援を貰える。......このような立場に、俺は居心地の良さを感じてしまっていたのだろう。程よいポジションであるとも思っていた。」
瑠千亜は下を向いたまま、何も言わぬ。
「しかし、お前にとってそのポジションは辛いもの以外の何物でもなかったのだな。」
ふと、瑠千亜が顔を上げる。
不満の中に驚きを含んだ表情をしていた。
「お前は俺とは違い、小学生の頃からずっと日本屈指の後衛として知られていたのだからな。全国大会でも勝てないのは隼・優ペアくらいだったらしいしな。それなのに、この学園に入って、沢山の上の実力者がいて、大した期待もされねば、それは不貞腐れてしまうものだろう。俺はそれを分かっていなかったようだ。しかし、分からぬのは初心者の俺くらいなものだろう。それを押し付けてしまって悪かった。しかし悪気はなかったのだ。だから許してくれぬか?」
瑠千亜に向き合って言を告げる。
瑠千亜ははじめこそ驚いたような表情をしていたが、俺の弁明が終わる頃にはバツの悪そうな顔に変わっていた。
「俺だって悪かったよ......」
ポツリと呟いたきり、何も言わなくなってしまった。
5分程続く、二人の間の沈黙。
どちらともなく話し始める気配はない。
「全く。許したのならそれなりにいつものようにならぬか。いつまで不貞腐れているのだ」
「なっ....!お前こそ何か言えよ!なんだよ急に謝ったり許してくれとか言って丸腰になったり!気まずいからお前が何か言うのを待ってたんだろが!」
「よし。俺が何か言ったらこの通り、お前はいつものように戻ったな。これでお前の望みは叶ったぞ。他に何か?」
「こっのやろう.....本当に腹立つ奴だな、お前」
「腹と言って思い出した。お前の進言通り、何か食わねばならなかったな。ほれ、これで全てお前の言ったことは叶えているぞ。」
「別になにか食えって言ったのも気まずさ紛らわすためだったし!心からお前の腹の心配なんてしてねーし!つかお前、さっきの言い合いのせいで試合終わったあとすぐに小春たちに会いに行きそびれただろーが!!!」
「む。言われてみればそうだな。しかし勝てたというだけで充分お前の魅力はきっと伝わってるさ。安心せい。」
「そういうことじゃねーんだよ!てかお前も良かったのかよ!?梨々ちゃんと話さなくて!?次の優たちの試合始まったらもう完全にそっちに集中しちまうぜ?」
「なあに、そう焦らんでも俺の魅力は既に伝わってるはずだ。それにここで勝負をかけんでも、まだまだ時間は沢山ある。」
「そりゃーお前は梨々ちゃんが優の気持ち知ってから動き出せばいいだけだからね!焦らないだろうけどね!俺は違うの!時間ないの!」
「む?何故だ?俺が彼女の気持ちに応えない限りお前に可能性はあるだろう。」
「ああ!もうややこしいわ!いいから!もう順番とか関係なく俺はすぐにでもアイツを振り向かせたいの!!!」
「よっ!さすが名言クリエイター!『順番とか関係なくアイツを振り向かせたい』とはなぁ......何て小粋なのだろうか.....」
「うるせーよ!良い加減にしろよテメェ!ほんっと腹立つ!!!」
瑠千亜は俺の挑発にまんまと乗る。
これは先程試合前に俺を挑発した仕返しだ。
「よっしゃあ!!!とりあえず、1勝したぜ!!!!」
第一試合をなんとかゲームカウント4-1で終わらせた俺らは、仲間の声援と瑠千亜の喜びの声に包まれながらコートから出た。
「おつかれ!お前らよくやったな!」
「すごいぞお前ら!!!一年で、しかも初試合で勝つなんて!」
「しかも相手は団体戦で3位には入る学校の二年だぞ?」
「おめでとう!」
「次も頑張れよ!!!」
コードの外に控えていた先輩方からの賞賛の声が次々と降り注ぐ。
ああ、有り難きことだ。
なんて幸せなのだろう.....「おい、まだ終わったわけじゃねーからな。」
俺がこの恵まれた状況を噛みしめていたというのに、隣のペアの男と言えばここぞとばかりに冷静な一言を入れてきた。
「わかっておる。全く、貴様は情緒も何も無い奴であるな。」
「情緒とか言ってる場合じゃねえんだっつーの!俺らの次の対戦相手はこの学園の三番手のペアだぞ!?気を抜くなよ!」
「なるほど。思いっきり楽しめるだけ楽しめばよいのだな。」
「あ、せんぱーい。こいつ負ける気でいまーす。」
瑠千亜が周りにいる先輩方に聞こえるように言う。
だって仕方なかろう。
誰が片方初心者の1年目ペアが百戦錬磨に近い先輩ペアを打ち倒そうと本気で思えるだろうか。いや、誰も思えるまい。
「まあ、1勝しただけでも十分なんじゃね?」
「次は相手が悪かったな。」
「1点取ることを目標にしてみろよ」
瑠千亜の流言に対して、先輩方は案外冷静な返しをした。
それみろ。
誰も俺達にそれほどの期待などしておらんのだ。
そういった、ルーキーであるからこその奇跡のようなものは俺たちではなく、あの一番手コンビにでも期待して欲しいところだ。
「そんなっ.....確かに簡単に勝てる相手ではないですけど.......」
あからさまに負けを前提とした先輩方の言い方に、瑠千亜は不満を隠せずに呟いた。
「よせ、瑠千亜。悔しいのは分かるが、それが俺らの実力ということだろう。」
「うるせーよっ!分かってるようなこと言うなよ!諦めてたくせに!」
「諦めているのではない。認めているのだ。」
「またお前は屁理屈をっ........!それでもこの学園の代表かよ!」
「代表の中にも上下はあるだろう。その中で俺たちはまだまだ下っ端というだけだ。この学園の中で上を見ればキリがないが、下を見ようとしても同じくらいの数がいるのだ。今はそれだけでも十分とせぬか。」
「そんなんでこれから先勝ち進められるのかよ!」
「落ち着け。まだ緒戦だぞ。焦って一回目から見の丈以上の結果を残そうとするな。」
「.......クソっ........!」
俺に言い負かされた瑠千亜は不機嫌そうに自分たちの陣営へ戻ってしまった。
「.........すみません。折角先輩方が応援に来て下さったのに。そのお陰で勝つことができたのに、あんな態度で。後で注意しておきますから。」
俺らの言い争いを見ていた先輩方に頭を下げて謝る。
「まあ、気にすんなよ。俺も一年の時は同じような気持になったからな。この学園には全国から最強と呼ばれる選手たちが入ってくるんだ。今まで期待されて当たり前、勝って当たり前の奴らがくるんだからな。それなのに、もっと上がいて、自分にはたいした期待がされていないと分かるとああいう風にもなってしまうさ。」
キャプテンの先輩が昔を懐古するかのように言った。
周りの先輩方も異議がないようで、頷いている。
「まあ、こればっかりは初心者のお前には分かりにくい感覚だろうけどよ。今までそれなりのプレーヤーとしてやってきた奴らはきっとみんな同じフラストレーションを溜めてるだろうからさ。それだけはどうかわかってやってくれ。」
ぽん、と俺の肩に手を置いて先輩方は歩きだした。
「次の第二試合、この学園から3ペア出るから、それぞれ分かれて応援しろって他の一年にも伝えておいてくれ。」
振り向いてキャプテンが俺に告げた。
俺は頷いて瑠千亜の元へと向かう。
「どうやら気持ちがずれていたのは俺のほうだったようだな。」
テントに戻ると、明らかにムシャクシャした様子でおにぎりに噛り付いていた瑠千亜がいた。
他にも数名の一年が居たものの、瑠千亜のただならぬ雰囲気に臆して誰も声を掛けられんでいた様子だった。
「すまぬがお前たち、先に第二試合の応援へ行ってくれぬか。2、5、6コートでそれぞれやっているはずだから、分かれて応援してくれ。」
テントの中でボールの空気調節やらリーグ表の確認やらをしていた一年に声をかける。
「隼と優はどうする?あいつらは第三試合あるみたいだけど.....」
「それならアップをさせておけ。もしテントに戻ってきたら第二試合が始まったことは伝えておくから。」
「わかった。」
10人ほどの一年がぞろぞろと動き出す。
「お前らも、お疲れ様。一年代表のうちの一ペアとしてよく勝ってくれたよ。次も頑張れよ」
うちの一人が、テントを後にするときにそう言い残して行った。
俺はこの一言だけでも充分なのだが、きっと隣でおにぎりをやけ食いしているこいつには別の意味で届いているのだろうな。
「おい、あまり食べ過ぎると次の試合に響くぞ。」
残っていた一年が全員掃けたのを見計らって、瑠千亜に声を掛けてみる。
「お前こそ何か食えよ。早朝練だったから腹減ってんだろ。」
「うむ。案外オカンなところがあるのだな。」
「うっせー。いいからとっとと食って応援行くぞ。」
「応援より先に、次の試合について話し合いたいのだが......」
「いいよ。どーせ1点取れればいいんだろ。相手のミスを待てば1点くらい取れるだろ。」
「そう簡単に取れるものではないと思うが.....」
「じゃーどうするんだよ!?どーせ俺らが攻めたって勝てねーしよ!」
「瑠千亜。さっきのことは俺が悪かった。」
完全に先ほどの俺や先輩方とのやり取りで自信を失い、自暴自棄になっている。
突如謝った俺に驚いて、瑠千亜はおにぎりを頬張るのを辞めてこちらを見上げた。
「思えば俺は初心者だからな。始めて2ヶ月で公式の大会に出させてもらっているという状況だけでも満足をしていたのだ。それなのに、まさか緒戦で勝てるとはな。俺にとっては何もかもが上手く行きすぎて恐ろしいくらいだ。」
瑠千亜が座っていたブルーシートの隣へ腰を下ろす。
「隼や優のような初日からいきなり一番手を打ち負かすような圧倒的な実力を持っているわけでもなし。周りの先輩方ほどの大きなプレッシャーを与えられていたわけでもなし。しかし一年として唯二の個人戦ペアとして応援を貰える。......このような立場に、俺は居心地の良さを感じてしまっていたのだろう。程よいポジションであるとも思っていた。」
瑠千亜は下を向いたまま、何も言わぬ。
「しかし、お前にとってそのポジションは辛いもの以外の何物でもなかったのだな。」
ふと、瑠千亜が顔を上げる。
不満の中に驚きを含んだ表情をしていた。
「お前は俺とは違い、小学生の頃からずっと日本屈指の後衛として知られていたのだからな。全国大会でも勝てないのは隼・優ペアくらいだったらしいしな。それなのに、この学園に入って、沢山の上の実力者がいて、大した期待もされねば、それは不貞腐れてしまうものだろう。俺はそれを分かっていなかったようだ。しかし、分からぬのは初心者の俺くらいなものだろう。それを押し付けてしまって悪かった。しかし悪気はなかったのだ。だから許してくれぬか?」
瑠千亜に向き合って言を告げる。
瑠千亜ははじめこそ驚いたような表情をしていたが、俺の弁明が終わる頃にはバツの悪そうな顔に変わっていた。
「俺だって悪かったよ......」
ポツリと呟いたきり、何も言わなくなってしまった。
5分程続く、二人の間の沈黙。
どちらともなく話し始める気配はない。
「全く。許したのならそれなりにいつものようにならぬか。いつまで不貞腐れているのだ」
「なっ....!お前こそ何か言えよ!なんだよ急に謝ったり許してくれとか言って丸腰になったり!気まずいからお前が何か言うのを待ってたんだろが!」
「よし。俺が何か言ったらこの通り、お前はいつものように戻ったな。これでお前の望みは叶ったぞ。他に何か?」
「こっのやろう.....本当に腹立つ奴だな、お前」
「腹と言って思い出した。お前の進言通り、何か食わねばならなかったな。ほれ、これで全てお前の言ったことは叶えているぞ。」
「別になにか食えって言ったのも気まずさ紛らわすためだったし!心からお前の腹の心配なんてしてねーし!つかお前、さっきの言い合いのせいで試合終わったあとすぐに小春たちに会いに行きそびれただろーが!!!」
「む。言われてみればそうだな。しかし勝てたというだけで充分お前の魅力はきっと伝わってるさ。安心せい。」
「そういうことじゃねーんだよ!てかお前も良かったのかよ!?梨々ちゃんと話さなくて!?次の優たちの試合始まったらもう完全にそっちに集中しちまうぜ?」
「なあに、そう焦らんでも俺の魅力は既に伝わってるはずだ。それにここで勝負をかけんでも、まだまだ時間は沢山ある。」
「そりゃーお前は梨々ちゃんが優の気持ち知ってから動き出せばいいだけだからね!焦らないだろうけどね!俺は違うの!時間ないの!」
「む?何故だ?俺が彼女の気持ちに応えない限りお前に可能性はあるだろう。」
「ああ!もうややこしいわ!いいから!もう順番とか関係なく俺はすぐにでもアイツを振り向かせたいの!!!」
「よっ!さすが名言クリエイター!『順番とか関係なくアイツを振り向かせたい』とはなぁ......何て小粋なのだろうか.....」
「うるせーよ!良い加減にしろよテメェ!ほんっと腹立つ!!!」
瑠千亜は俺の挑発にまんまと乗る。
これは先程試合前に俺を挑発した仕返しだ。