一昔前の、中学生活
第十三節 試合前だぞ!
※隼side※
「とりあえず、山場のひとつは超えたな。」
第三試合が終わって、再び自主練習に励んでいた優が、珍しくそんなことを言った。
「そうだけど、、、まだまだ試合はあるよ?いつもなら『優勝するまで気を抜くな。』って言うのに、、、珍しいね?」
「別に。勿論気を抜いている訳ではない。ただ当たったことのないペアとの試合はひとまずこれで終わりだ、という意味だ。」
確かに。
第二試合、第三試合の相手は中学に入ってから始めたペアだったり、小学校のときとは変わったペアになっていたりしたから、正直情報量が少なかった。
けど、これから戦う相手は、自分の学校の先輩を含めて、皆戦ったことのあるペアだ。
「まあそれがめちゃくちゃ強いんだけどねー、、、」
思わず苦笑がこぼれる。
もし決勝までいけたとしても、また一番手の先輩と戦うことになるだろう。
「隼。優勝したときの約束、、、その、、、」
「うん。勿論覚えてるよ。だからちゃんと優勝しよう?」
「、、、ああ。」
俯きがちに優が返事をする。
なんだか、さっきからいつもの優らしくないな、、、
「優、もしかして緊張してるの?」
「なっ、、、そんなの当然だろう。絶対勝たなければいけないんだからな。ある程度の緊張はむしろ必要だろう。」
「うーん、、そうなんだけどさ、、、」
「何だ」
「それにしてもさっきから優の様子がいつもと違うなーって思ってさ」
俺がそう言うと、今度は一瞬驚いたように目を見開いて、また俯いた。
「他人の心情に疎いはずのお前が今日はやけに鋭いな。」
「そんな人を無情なやつみたいに。、、、分かるよ。優のことだもん。もう何年も一緒にいるんだから。俺にだってわかりますー。」
少し拗ねたように言ったから、また毅然とした感じで何かを言ってくるのだろうと思っていたけど、、、、、
「、、、、、嘘だ。お前が心情に疎いはずがないよな。お前が俺のことをよくわかるように、俺だって、お前が誰よりも人の心を汲み取れるやつだって分かってるはずなのにな、、、」
目は悲しそうにしているのに、口元だけ笑ったような、複雑な表情で優が言う。
「、、、、、優、本当にどうした?熱でもあるの?」
「っ、、、やめろ、、、」
冗談めかして言いながらさり気なく優の額に手を当てると、優はそれを拒むように頭を振った。
「、、、あのさ優、、、俺ら、まだ多くて3試合はあるんだよ?」
「ああ。、、、、それがどうした。」
「俺らは常に、どんなに強い相手でも負けないように優勝を目指して頑張ってきたんだよね?」
「ああ。」
「でもいくら練習を頑張っても、本番で100%以上出し切らないとなんの意味もないんじゃないの?」
「、、、、」
「二人が100%集中出来ないと次の試合すら勝てないよ。、、、、もし集中できないようなら、優が言おうとしてること、今言っちゃって。」
優が顔を上げる。
沈黙が続いた後、「、、、、それはどうしても出来ない、、、」
優が呟いた。
「それでも優が次の試合をちゃんと見られるならいいよ。」
「ああ。悪かった。明らかに俺は集中力が落ちていたな。お前の言う通りだよ。ここで集中しなければ、練習で積み重ねてきた意味が何もない。」
「うん!だからここで頑張ろう」
「そうだな。ありがとな隼。」
ポン、と俺の背中を優しく叩きながら優はいつものような笑顔を見せた。
「良かった。優が正気に戻った。」
「珍しくお前から怒られたからな。ぶっちゃけ俺にとっちゃ、お前に怒られることが他の何よりも効果的だからな。そして俺はいつでも正気だ。」
優がそう言った時、マネージャーの報告が入った。
「2つ前の試合、ゲームカウント3-1です!きっと間もなく終わります!」
「了解です!ありがとう!!!」
俺と優は準備をしてコートへと向かった。
次、勝てたらベスト8に残ることができる。
優勝に近づくための大きな試合だ。
優の話を聞くためにも、絶対に負けられないんだ。
「とりあえず、山場のひとつは超えたな。」
第三試合が終わって、再び自主練習に励んでいた優が、珍しくそんなことを言った。
「そうだけど、、、まだまだ試合はあるよ?いつもなら『優勝するまで気を抜くな。』って言うのに、、、珍しいね?」
「別に。勿論気を抜いている訳ではない。ただ当たったことのないペアとの試合はひとまずこれで終わりだ、という意味だ。」
確かに。
第二試合、第三試合の相手は中学に入ってから始めたペアだったり、小学校のときとは変わったペアになっていたりしたから、正直情報量が少なかった。
けど、これから戦う相手は、自分の学校の先輩を含めて、皆戦ったことのあるペアだ。
「まあそれがめちゃくちゃ強いんだけどねー、、、」
思わず苦笑がこぼれる。
もし決勝までいけたとしても、また一番手の先輩と戦うことになるだろう。
「隼。優勝したときの約束、、、その、、、」
「うん。勿論覚えてるよ。だからちゃんと優勝しよう?」
「、、、ああ。」
俯きがちに優が返事をする。
なんだか、さっきからいつもの優らしくないな、、、
「優、もしかして緊張してるの?」
「なっ、、、そんなの当然だろう。絶対勝たなければいけないんだからな。ある程度の緊張はむしろ必要だろう。」
「うーん、、そうなんだけどさ、、、」
「何だ」
「それにしてもさっきから優の様子がいつもと違うなーって思ってさ」
俺がそう言うと、今度は一瞬驚いたように目を見開いて、また俯いた。
「他人の心情に疎いはずのお前が今日はやけに鋭いな。」
「そんな人を無情なやつみたいに。、、、分かるよ。優のことだもん。もう何年も一緒にいるんだから。俺にだってわかりますー。」
少し拗ねたように言ったから、また毅然とした感じで何かを言ってくるのだろうと思っていたけど、、、、、
「、、、、、嘘だ。お前が心情に疎いはずがないよな。お前が俺のことをよくわかるように、俺だって、お前が誰よりも人の心を汲み取れるやつだって分かってるはずなのにな、、、」
目は悲しそうにしているのに、口元だけ笑ったような、複雑な表情で優が言う。
「、、、、、優、本当にどうした?熱でもあるの?」
「っ、、、やめろ、、、」
冗談めかして言いながらさり気なく優の額に手を当てると、優はそれを拒むように頭を振った。
「、、、あのさ優、、、俺ら、まだ多くて3試合はあるんだよ?」
「ああ。、、、、それがどうした。」
「俺らは常に、どんなに強い相手でも負けないように優勝を目指して頑張ってきたんだよね?」
「ああ。」
「でもいくら練習を頑張っても、本番で100%以上出し切らないとなんの意味もないんじゃないの?」
「、、、、」
「二人が100%集中出来ないと次の試合すら勝てないよ。、、、、もし集中できないようなら、優が言おうとしてること、今言っちゃって。」
優が顔を上げる。
沈黙が続いた後、「、、、、それはどうしても出来ない、、、」
優が呟いた。
「それでも優が次の試合をちゃんと見られるならいいよ。」
「ああ。悪かった。明らかに俺は集中力が落ちていたな。お前の言う通りだよ。ここで集中しなければ、練習で積み重ねてきた意味が何もない。」
「うん!だからここで頑張ろう」
「そうだな。ありがとな隼。」
ポン、と俺の背中を優しく叩きながら優はいつものような笑顔を見せた。
「良かった。優が正気に戻った。」
「珍しくお前から怒られたからな。ぶっちゃけ俺にとっちゃ、お前に怒られることが他の何よりも効果的だからな。そして俺はいつでも正気だ。」
優がそう言った時、マネージャーの報告が入った。
「2つ前の試合、ゲームカウント3-1です!きっと間もなく終わります!」
「了解です!ありがとう!!!」
俺と優は準備をしてコートへと向かった。
次、勝てたらベスト8に残ることができる。
優勝に近づくための大きな試合だ。
優の話を聞くためにも、絶対に負けられないんだ。