一昔前の、中学生活
第二章 計画
第一節 ゴールデンウィーク
5月。
俺たち新入生は、やっと新しい環境に慣れはじめてきた頃になった。
つい1、2週間前までは校舎や校舎に続く並木道を彩っていた満開だった桜も春風に吹かれて全て舞い、青青とした若葉が心地よい春の名残を感じさせている。
5月と言えば、誰しもが喜ぶあの週間。
そう、「おい!隼ー!ゴールデンウイークの遊びの計画立てようぜ!」
瑠千亜がいつにも増して高いテンションで言ってきた。
そう、俺たちは、5月のゴーウイーク中に、仲良くなったメンバーで遊びに行く計画を立てようとしていた。
「ゴールデンウイーク中は全く部活もないのか。つまらんが、たまには息抜きも必要だろう。」
優も瑠千亜に続いてやってきた。
「ふん。またじじいくせぇこと言いやがって!お前みてーなヤツが一番息抜きが必要なんじゃねーの?」
「俺はお前のように息抜きばかりのヤツの方が問題だと思う。それこそじじいになった時に後悔するぞ。」
「何を言いやがる!俺はいくら年をとろーが、ずっと元気ですー!ピンピンですー!」
優と瑠千亜がいつものようにじゃれている。
・・・第三者の俺からすると、何だかんだでお互い相手の心配もしている気がするんだけど・・・
「しかし、今時のおのこはどのような遊びをするものなのだ?まさかこの年でアミューズメントパークなどではなかろう。」
優と瑠千亜が喋っている後ろから、五郎がゆっくりと腕を組ながら近づいてきて言った。
「いやいや!アミューズメントパークは普通じゃね?むしろ、中学生なら行よな?」
瑠千亜が驚いたように言う。
「ふん。そういうものなのか。」
「なんだ?おめーもまさか優みてーな年増おとこなのか?」
「年増じゃない。俺は12だ。」
「72あたりの間違いだろ。・・・ところで五郎、お前本当に外で遊んだりしないのか?」
「まあそうだな。最近の女性は何かと外に出たがらない。特に俺より大人の方々はな。俺は変な目で見られるけどな。」
「えっ!?お前どこ行ってんだよ!」
「想像してみろ。大人の女性と行く室内の場所。・・・多数思い浮かぶやもしれんがたいてい当たっているだろう。」
「・・・なんだ・・・お前が男どもが遊ぶ場所が分からないというのはそういうことだったのか。」
五郎の言葉に優が呆れたように頭に手を当てて言う。
「・・・おい・・・五郎お前それって・・・」
「ふん。その程度で赤面とはな。瑠千亜もまだまだ童であるようだ。」
「う・・・うるせー!お前が異常なんだからな!中1だぞ!俺たち!絶対お前が変!」
瑠千亜が、五郎の言うとおり顔を真っ赤にして五郎から遠ざかるように叫ぶ。
その隣で優は相変わらず呆れた表情で五郎を見ている。
・・・なんだろう?会話に全くついていけてないよ・・・
「え?どういうこと?五郎はどこに行ってるの?」
「は!?隼お前わかんねーの?女と二人きりだぞ!あそこしかねー!」
「・・・?女の人と行くところ?デートスポットっていうこと?」
「ちげえ!そんなんじゃねーよ!なに?お前アタマの中小学生!?頭いいくせに小学生なの!?」
「えっ!?デートって小学生がすることなの?今時の小学生は大人だね~」
「大人の定義が明らかに俺らとズレてるっ!!」
まだ赤面したままの瑠千亜が何故か興奮した状態で俺の言うことにツッコむ。
わかんないよ!瑠千亜の言ってることが!
大人の定義ってなに!?何で瑠千亜はそんなに赤面してるの?
「もう止めろ。瑠千亜。こいつにそういう話は通じない。」
すると優が俺と瑠千亜の間に調停の手を入れた。
「え、マジで?純粋潔白なの?」
「そうだ、純粋潔白だ。だからこいつをこれ以上汚すな。」
「いや、まだ汚してねーよ!」
「いや、瑠千亜。止めてあげた方がよい。・・・優の為に。」
「なんで優が出てくるのー!?」
五郎の言葉に、俺と瑠千亜が同時にツッコんだ。
え?どういうこと?
ますますわかんなくなっていくよ~・・・
「ほら、もう本当に止めろ。隼がさらに混乱している。・・・そして五郎、後で覚えておけ。」
「なに。別に言ってはいかんことを言ったのではない。」
「言い訳は無効だ。」
「やべぇ、俺、そろそろこのやりとりの真意を掴み始めたかもしれねぇ・・・」
「む!?本当にか?」
「余計なことを口にしたら殺すぞ、五郎。」
ついに優が五郎の首を後ろから羽交い締めにした。
・・・俺にはまだ意味がよく分からないけどね。
「優、やめなよ!五郎が死んじゃう・・・」
「死なない程度にやってるつもりだが・・・」
そういいながらも優は五郎から離れてくれた。
良かった良かった。
「隼くんにはずいぶん素直なのね!」
俺が安堵していると、今登校してきたらしい清和さんと梨々がやって来た。
「清和、まさかお前も・・・」
「見くびらないでよ!とーっくに気づいてたわよ!」
「そうか・・・」
「あら、落ち込まないで!私は何にも言わないから!」
清和さんが優の肩にポン、と軽く手を置く。
優は何で励まされてるんだろう・・・?
「うーん・・・梨々にはサッパリ!皆、おはよー!」
梨々が小さく呟いたあと、明るい笑顔で挨拶をした。
梨々の笑顔は朝の太陽に重なっているかのように明るくて、可愛らしい。
出会った日から、梨々の笑顔を見る度に心臓が小さく跳ねる。
そしてそのときめきは、日々梨々と過ごしていくたびに、日毎大きくなってゆく。
「おはよう、梨々さん」
「おはよう。」
「うむ。おはやう、梨々さん。朝から明るい笑顔をありがとう。」
「おーっす」
皆それぞれ挨拶を返した。
さすが女の子と仲の良い五郎は、俺が・・・いや、きっと皆が思っていたことを照れないで言える。
・・・いいな~・・・俺にもあの勇気欲しいよ・・・
「ところで、皆で何の話をしてたの?」
梨々が楽しそうに聞いてきた。
「せっかく仲良くなったし、ゴールデンウイーク中に皆でどこかに行かないかって話をしてたの!どう?二人も一緒に来ない?」
梨々と清和さんも誘った。勿論、皆もそのつもりだっただろうし。
「ゴールデンウイークなら確か部活もなかったわよね。いいね!初めてだし、このメンバーで行くなら楽しそう!」
「うん!梨々も行きたい!」
二人とも誘いに乗ってくれた。
女の子と遊ぶのはあんまり慣れてないけど、気さくに話せる清和さんと、・・・梨々がきてくれるのは凄く嬉しい!
「では二人にお聞きしよう。どちらへ行きたい?」
二人の参加が決定した瞬間、五郎は目を輝かせて行き場を尋ねた。
さすが、レディファーストだなぁ・・・
「えーっ?あたしは、ディズニーランドがいい!春って、一番行きやすくない?」
「梨々は・・・何でもできる場所がいいな!そういうアトラクションもあって、スポーツもできて、カラオケもあって、ご飯も食べられる場所!」
梨々と清和さんはそれぞれリクエストを挙げた。
こういう時に迷ったり遠慮し過ぎないではっきり意見を言えるところが、二人の共通した良いところだと思う。
「なる程。どちらも名案だ。さて、お前ら、どちらにする?」
「って、俺たちに提案権はないのかよ!」
瑠千亜が心底残念そうにツッコむ。
瑠千亜はどこかそんなに行きたい場所があったのかな?
「少々レディファーストが過ぎるぞ。・・・まあ、俺はどこでも良い。・・・どうせ俺の案は不可決だろう。」
「え?優くんはどこに行きたいの?」
諦めたように言う優に梨々は聞いた。
「・・・美術館とサイエンス実験場。」
「うわっ!それはねぇな!」
「さいえんす何とやらは俺には不向きであろう。」
優の意見に瑠千亜と五郎はすかさず反対する。
確かに優らしいけど・・・
でも・・・
「でも、たまにはそういう落ち着いた場所も良いかもよ?美術館なら皆の好みとか趣味の傾向がわかるかもしれないし、実験場なら皆で協力すれば更に仲が深まるかもしれないしさ」
そう。
毎日学校生活で一緒にいるとはいえ、知り合ってまだまだ日が浅いメンバーがほとんどだ。
皆の仲を更に深めるなら、そういう場所はきっともってこいだろう。
「・・・ふーん、なる程ね~」
清和さんが呟いた。
「優くんの気持ち分かったわ」
「・・・おい・・・」
「清和さん、俺も同じことを思っていた。案外優の趣味は悪いばかりではなさそうだな。」
「五郎お前は黙ってろ。」
「優・・・これは確かにそうなるわな」
「瑠千亜は抽象的すぎて何を言いたいのかもはや分からん。」
「隼くんって、凄く優しいのね!」
「そう、一条それでいいのだ。それだけでいいのだ。余計なことを言わんでもな。」
「うん!梨々今感動した!隼くんって周りの人のこと、凄く考えてるんだね~!」
「あっ・・・ありがとう!」
梨々に誉められて、いてもたっても居られないくらい嬉しいけど恥ずかしい気持ちになった。
梨々は人を誉めるのが上手いから、その度に俺はこんなに照れてしまう。
こんなとき、五郎の堂々とした感じが本当に羨ましい。
「隼、ありがとな。」
優が向き合ってお礼を言ってくれた。
そうだよ!みんな優の意見に同意を示してくれてたんだ!
「ううん!お礼を言うなら皆に言って!皆が優の提案に賛成してくれたから・・・」
「・・・いや、俺らが賛成したのって、多分違うことに・・・」
「いいのよ!そういうことにしましょう!」
瑠千亜が何か言い掛けたが、清和さんがそれを制した。
「皆本当にありがとう!・・・じゃあ、どうしようかな・・・」
「あ、やっぱりディズニーランドはいいわよ。私はただ季節的に行きたかっただけだし。梨理の言うとおり、美術館や実験場を含めた何でもパークみたいなところにしよう?」
柔らかい笑顔で清和さんが言った。
「凄くいいと思うけど、清和さんはいいの?」
「本当に大丈夫よ!また今度、もっと仲良くなってから行きましょう」
「そっか・・・ありがとう!」
「ありがとう清和さん」
清和さん、大人だなぁ。
「じゃあ、駅前の『エキサイトランド』は?あそこなら本当に何でもあるくね?」
瑠千亜が真っ先に提案してくれた。
確かにエキサイトランドなら、ゲームにスポーツ、カラオケから美術館や体験場、買い物に映画に食事も出来る場所だ。
「凄くいいと思う!」
「だろ?俺、実は最初からそこに行きたかったんだよな~」
「そうだな。図書館もあるしな。」
「優、おめーはやっぱりそっち系かい。」
「うむ。あそこのライトは悪くない。」
「いや、そっちには行かねーから五郎!てか、そんな場所もあったのかよ!?」
「梨々、私たち行かない方が良いかも。」
「冗談だ!頼むから戻ってきてくれ!お二方!絶対そこにはいかない!」
「だって、梨々。しょうがない。信じてみましょう。」
「?何の話~?」
後半はあまりよく分からなかったけど、みんなエキサイトランドに賛成のようだ。
日にちは2日後に決まった。
中学に入って、初めて友達と遊ぶ。
・・・それに、梨々とも会うことが出来る・・・
そのことが嬉しくて、俺は当日になるまで浮いた気持ちを抑えきれなかった。
俺たち新入生は、やっと新しい環境に慣れはじめてきた頃になった。
つい1、2週間前までは校舎や校舎に続く並木道を彩っていた満開だった桜も春風に吹かれて全て舞い、青青とした若葉が心地よい春の名残を感じさせている。
5月と言えば、誰しもが喜ぶあの週間。
そう、「おい!隼ー!ゴールデンウイークの遊びの計画立てようぜ!」
瑠千亜がいつにも増して高いテンションで言ってきた。
そう、俺たちは、5月のゴーウイーク中に、仲良くなったメンバーで遊びに行く計画を立てようとしていた。
「ゴールデンウイーク中は全く部活もないのか。つまらんが、たまには息抜きも必要だろう。」
優も瑠千亜に続いてやってきた。
「ふん。またじじいくせぇこと言いやがって!お前みてーなヤツが一番息抜きが必要なんじゃねーの?」
「俺はお前のように息抜きばかりのヤツの方が問題だと思う。それこそじじいになった時に後悔するぞ。」
「何を言いやがる!俺はいくら年をとろーが、ずっと元気ですー!ピンピンですー!」
優と瑠千亜がいつものようにじゃれている。
・・・第三者の俺からすると、何だかんだでお互い相手の心配もしている気がするんだけど・・・
「しかし、今時のおのこはどのような遊びをするものなのだ?まさかこの年でアミューズメントパークなどではなかろう。」
優と瑠千亜が喋っている後ろから、五郎がゆっくりと腕を組ながら近づいてきて言った。
「いやいや!アミューズメントパークは普通じゃね?むしろ、中学生なら行よな?」
瑠千亜が驚いたように言う。
「ふん。そういうものなのか。」
「なんだ?おめーもまさか優みてーな年増おとこなのか?」
「年増じゃない。俺は12だ。」
「72あたりの間違いだろ。・・・ところで五郎、お前本当に外で遊んだりしないのか?」
「まあそうだな。最近の女性は何かと外に出たがらない。特に俺より大人の方々はな。俺は変な目で見られるけどな。」
「えっ!?お前どこ行ってんだよ!」
「想像してみろ。大人の女性と行く室内の場所。・・・多数思い浮かぶやもしれんがたいてい当たっているだろう。」
「・・・なんだ・・・お前が男どもが遊ぶ場所が分からないというのはそういうことだったのか。」
五郎の言葉に優が呆れたように頭に手を当てて言う。
「・・・おい・・・五郎お前それって・・・」
「ふん。その程度で赤面とはな。瑠千亜もまだまだ童であるようだ。」
「う・・・うるせー!お前が異常なんだからな!中1だぞ!俺たち!絶対お前が変!」
瑠千亜が、五郎の言うとおり顔を真っ赤にして五郎から遠ざかるように叫ぶ。
その隣で優は相変わらず呆れた表情で五郎を見ている。
・・・なんだろう?会話に全くついていけてないよ・・・
「え?どういうこと?五郎はどこに行ってるの?」
「は!?隼お前わかんねーの?女と二人きりだぞ!あそこしかねー!」
「・・・?女の人と行くところ?デートスポットっていうこと?」
「ちげえ!そんなんじゃねーよ!なに?お前アタマの中小学生!?頭いいくせに小学生なの!?」
「えっ!?デートって小学生がすることなの?今時の小学生は大人だね~」
「大人の定義が明らかに俺らとズレてるっ!!」
まだ赤面したままの瑠千亜が何故か興奮した状態で俺の言うことにツッコむ。
わかんないよ!瑠千亜の言ってることが!
大人の定義ってなに!?何で瑠千亜はそんなに赤面してるの?
「もう止めろ。瑠千亜。こいつにそういう話は通じない。」
すると優が俺と瑠千亜の間に調停の手を入れた。
「え、マジで?純粋潔白なの?」
「そうだ、純粋潔白だ。だからこいつをこれ以上汚すな。」
「いや、まだ汚してねーよ!」
「いや、瑠千亜。止めてあげた方がよい。・・・優の為に。」
「なんで優が出てくるのー!?」
五郎の言葉に、俺と瑠千亜が同時にツッコんだ。
え?どういうこと?
ますますわかんなくなっていくよ~・・・
「ほら、もう本当に止めろ。隼がさらに混乱している。・・・そして五郎、後で覚えておけ。」
「なに。別に言ってはいかんことを言ったのではない。」
「言い訳は無効だ。」
「やべぇ、俺、そろそろこのやりとりの真意を掴み始めたかもしれねぇ・・・」
「む!?本当にか?」
「余計なことを口にしたら殺すぞ、五郎。」
ついに優が五郎の首を後ろから羽交い締めにした。
・・・俺にはまだ意味がよく分からないけどね。
「優、やめなよ!五郎が死んじゃう・・・」
「死なない程度にやってるつもりだが・・・」
そういいながらも優は五郎から離れてくれた。
良かった良かった。
「隼くんにはずいぶん素直なのね!」
俺が安堵していると、今登校してきたらしい清和さんと梨々がやって来た。
「清和、まさかお前も・・・」
「見くびらないでよ!とーっくに気づいてたわよ!」
「そうか・・・」
「あら、落ち込まないで!私は何にも言わないから!」
清和さんが優の肩にポン、と軽く手を置く。
優は何で励まされてるんだろう・・・?
「うーん・・・梨々にはサッパリ!皆、おはよー!」
梨々が小さく呟いたあと、明るい笑顔で挨拶をした。
梨々の笑顔は朝の太陽に重なっているかのように明るくて、可愛らしい。
出会った日から、梨々の笑顔を見る度に心臓が小さく跳ねる。
そしてそのときめきは、日々梨々と過ごしていくたびに、日毎大きくなってゆく。
「おはよう、梨々さん」
「おはよう。」
「うむ。おはやう、梨々さん。朝から明るい笑顔をありがとう。」
「おーっす」
皆それぞれ挨拶を返した。
さすが女の子と仲の良い五郎は、俺が・・・いや、きっと皆が思っていたことを照れないで言える。
・・・いいな~・・・俺にもあの勇気欲しいよ・・・
「ところで、皆で何の話をしてたの?」
梨々が楽しそうに聞いてきた。
「せっかく仲良くなったし、ゴールデンウイーク中に皆でどこかに行かないかって話をしてたの!どう?二人も一緒に来ない?」
梨々と清和さんも誘った。勿論、皆もそのつもりだっただろうし。
「ゴールデンウイークなら確か部活もなかったわよね。いいね!初めてだし、このメンバーで行くなら楽しそう!」
「うん!梨々も行きたい!」
二人とも誘いに乗ってくれた。
女の子と遊ぶのはあんまり慣れてないけど、気さくに話せる清和さんと、・・・梨々がきてくれるのは凄く嬉しい!
「では二人にお聞きしよう。どちらへ行きたい?」
二人の参加が決定した瞬間、五郎は目を輝かせて行き場を尋ねた。
さすが、レディファーストだなぁ・・・
「えーっ?あたしは、ディズニーランドがいい!春って、一番行きやすくない?」
「梨々は・・・何でもできる場所がいいな!そういうアトラクションもあって、スポーツもできて、カラオケもあって、ご飯も食べられる場所!」
梨々と清和さんはそれぞれリクエストを挙げた。
こういう時に迷ったり遠慮し過ぎないではっきり意見を言えるところが、二人の共通した良いところだと思う。
「なる程。どちらも名案だ。さて、お前ら、どちらにする?」
「って、俺たちに提案権はないのかよ!」
瑠千亜が心底残念そうにツッコむ。
瑠千亜はどこかそんなに行きたい場所があったのかな?
「少々レディファーストが過ぎるぞ。・・・まあ、俺はどこでも良い。・・・どうせ俺の案は不可決だろう。」
「え?優くんはどこに行きたいの?」
諦めたように言う優に梨々は聞いた。
「・・・美術館とサイエンス実験場。」
「うわっ!それはねぇな!」
「さいえんす何とやらは俺には不向きであろう。」
優の意見に瑠千亜と五郎はすかさず反対する。
確かに優らしいけど・・・
でも・・・
「でも、たまにはそういう落ち着いた場所も良いかもよ?美術館なら皆の好みとか趣味の傾向がわかるかもしれないし、実験場なら皆で協力すれば更に仲が深まるかもしれないしさ」
そう。
毎日学校生活で一緒にいるとはいえ、知り合ってまだまだ日が浅いメンバーがほとんどだ。
皆の仲を更に深めるなら、そういう場所はきっともってこいだろう。
「・・・ふーん、なる程ね~」
清和さんが呟いた。
「優くんの気持ち分かったわ」
「・・・おい・・・」
「清和さん、俺も同じことを思っていた。案外優の趣味は悪いばかりではなさそうだな。」
「五郎お前は黙ってろ。」
「優・・・これは確かにそうなるわな」
「瑠千亜は抽象的すぎて何を言いたいのかもはや分からん。」
「隼くんって、凄く優しいのね!」
「そう、一条それでいいのだ。それだけでいいのだ。余計なことを言わんでもな。」
「うん!梨々今感動した!隼くんって周りの人のこと、凄く考えてるんだね~!」
「あっ・・・ありがとう!」
梨々に誉められて、いてもたっても居られないくらい嬉しいけど恥ずかしい気持ちになった。
梨々は人を誉めるのが上手いから、その度に俺はこんなに照れてしまう。
こんなとき、五郎の堂々とした感じが本当に羨ましい。
「隼、ありがとな。」
優が向き合ってお礼を言ってくれた。
そうだよ!みんな優の意見に同意を示してくれてたんだ!
「ううん!お礼を言うなら皆に言って!皆が優の提案に賛成してくれたから・・・」
「・・・いや、俺らが賛成したのって、多分違うことに・・・」
「いいのよ!そういうことにしましょう!」
瑠千亜が何か言い掛けたが、清和さんがそれを制した。
「皆本当にありがとう!・・・じゃあ、どうしようかな・・・」
「あ、やっぱりディズニーランドはいいわよ。私はただ季節的に行きたかっただけだし。梨理の言うとおり、美術館や実験場を含めた何でもパークみたいなところにしよう?」
柔らかい笑顔で清和さんが言った。
「凄くいいと思うけど、清和さんはいいの?」
「本当に大丈夫よ!また今度、もっと仲良くなってから行きましょう」
「そっか・・・ありがとう!」
「ありがとう清和さん」
清和さん、大人だなぁ。
「じゃあ、駅前の『エキサイトランド』は?あそこなら本当に何でもあるくね?」
瑠千亜が真っ先に提案してくれた。
確かにエキサイトランドなら、ゲームにスポーツ、カラオケから美術館や体験場、買い物に映画に食事も出来る場所だ。
「凄くいいと思う!」
「だろ?俺、実は最初からそこに行きたかったんだよな~」
「そうだな。図書館もあるしな。」
「優、おめーはやっぱりそっち系かい。」
「うむ。あそこのライトは悪くない。」
「いや、そっちには行かねーから五郎!てか、そんな場所もあったのかよ!?」
「梨々、私たち行かない方が良いかも。」
「冗談だ!頼むから戻ってきてくれ!お二方!絶対そこにはいかない!」
「だって、梨々。しょうがない。信じてみましょう。」
「?何の話~?」
後半はあまりよく分からなかったけど、みんなエキサイトランドに賛成のようだ。
日にちは2日後に決まった。
中学に入って、初めて友達と遊ぶ。
・・・それに、梨々とも会うことが出来る・・・
そのことが嬉しくて、俺は当日になるまで浮いた気持ちを抑えきれなかった。