一昔前の、中学生活
第三節 好きな人って…?
「よおーし!これで全員揃ったな!」
午前10時。
アミューズメントパークに集まった俺たちは、瑠千亜の潔い第一声によって記念すべき今日を始める。
「それにしても五郎!お前意外と遅かったな!」
「うむ。すまない。地図を見てもなかなか分かるまい。」
「意外と方向音痴だからな、こいつは」
からかうようにして五郎を咎める瑠千亜と、それをいつものことのようにさらりと流す五郎、そして2人を見守る優。
いつもと変わらなくわいわいしている三人を見ると、今日で俺らはさらに仲良くなれる気がする。
「あら、五郎くん方向音痴なら早めに言ってくれれば良かったのに。実は私もそうとう迷って・・・」
「何!?清和さんも方向音痴なのか!?そうだな、本当に早く言えば良かった!」
「いや、アホかお前ら!!方向音痴同士が互いに報告しあったところでどうするんだ!?」
「その時は瑠千亜くんになんとかしてもらうわ」
「ああっ!?」
こちらは珍しくボケをかます清和さん。
しかし服はイメージと変わらず、黒を基調とした大人っぽい雰囲気だ。
本当に、清和さんの魅力は梨理と違わずに素晴らしく、頼られた瑠千亜なんて、言葉は荒いけど完全に照れちゃってる。
「はーや~とー!テメー!梨々ちゃんと何ラブラブしてたんだ!!」
「えっ!?」
瑠千亜の急な発言に、その場にいた瑠千亜以外の全員が驚きの声を上げた。
「なっ?!ラブラブって!?ただ話してただけで・・・」
「嘘つくなー!テメーまた抜け駆けしやがったな!」
「違うよ!本当にっ・・・ねえ、梨々さん!?」
「うっ、うん!お話はしてたけど、ラブラブでは・・・」
「いーや!ラブラブしてたね!」
「おい、いい加減にしろ。それ以上の無駄な検索は梨々さんに失礼だ。」
「隼はどうでもいいのか?」
「隼はお前が守ってやればよい、優・・・ってああああぁぁぁー!!」
「五郎、もう俺はお前を許さん。」
「うーん・・・でも確かに、隼くんと梨々ってかなり仲良いよね?」
腕で首を絞められながら優に連れて行かれた五郎をたすけに行こうとしたところ、清和さんが手で俺を遮るようにしながら言った。
「ほらな!な、清和!こいつら絶対付き合ってるよな!」
「付き合うまではどうかしら。でも、お互い好意は持ってるでしょ?」
「ちょっ、2人とも!これ以上は五郎の言う通り梨々さんに失礼だよ!」
どうしよう・・・これ以上探求されると、うまく乗り切れられる気がしないよ・・・
「梨々は別に失礼と思わないよ!だって仲が良いのは本当だし、それに、隼くんは話しやすいし、優しくしてくれるし・・・隼くんは、最高のお友達だよ!」
梨々が満面の笑みで元気に言い放つ。
「ねっ!隼くん!」
「えっ!うん!」
不意に振られた梨々の言葉になんとか合わせて答える。
・・・また・・・
顔が熱くなるような誉め言葉を並べておきながら、思い切り『友達』と言い放つ。
梨々の自由な発言に、俺の心は翻弄されるだけ。
・・・友達、かぁ・・・
さすがの梨々でも、皆の前で好きな男の人に友達とはいわないだろう。
「ねー、梨々の好きな人って、もしかしてこの四人の中にいる?」
くたくたになりながらも笑みを浮かべている五郎と、呆れたようにそんな五郎を見る優が戻ってきたとき、清和さんは梨々に聞いた。
「えっ、それは・・・言えないよ・・・」
「いいじゃん!お願い!だっていずれ言うんでしょ?」
「うん・・・まあ、そうだけど・・・」
「是非お聞かせ願いたい、梨々さん。」
「大丈夫、五郎ではないから。・・・でも俺もそれは気になる。」
「名前までは言わなくていい。」
やっぱり梨々の好きな人は、皆気になるんだね・・・
俺もかなり気になる。
だけど・・・
「でも梨々さんが嫌なら無理して言わないでもいいよ。間接的に、本人にも聞かれちゃう訳だし・・・」
「ありがとう隼くん。やっぱり優しいね。・・・でも、大丈夫。梨々の好きな人はこの中にいるから・・・」
少し照れたように下を向きつつ、意外と梨々はさらりとカミングアウトした。
・・・良かった!
この中にいるんだ・・・
梨々の、好きな人・・・
その事実が、俺の淡い期待を再発させる。
何度も都合良く解釈する自分を叱責したが、確率は4分の1。
梨々がはっきりと好きな人を言うまでは、きっと今まで以上に期待ばかりしてしまうだろう・・・
でも、
「ええー!?マジでか!?やべ、俺春来たんじゃね?」
「調子に乗るな。間違いなくお前ではない。」
「うるせー優!お前こそないんだよ!この堅物じじいが!」
「梨々さんに好かれるとは、そうとうな者のはず・・・ちくしょう、おのれぇ!誰だ!?梨々さんのバージンを奪うのは!」
「話が早いわぁ!あほか、お前最低野郎だな!なんで好きイコールそういうことになるんだよ!」
「瑠千亜、今更こいつに正常な恋愛を説こうとしても無駄なだけだ。」
いつも楽しんでいて、思いやりがあって、どこか暖かいこの三人なら・・・
もし、4分の1が俺じゃなくても、この三人の誰かなら、喜んで梨々を応援できる。
きっと、誰と付き合っても、梨々は幸せになれるだろうから。
「よーし!!じゃあ、ここで運命を試そうではないかっ!」
わいわいしていた中から、瑠千亜の大声が響いた。
「運命を試す?」
「そう!今からこの6人は2人づつのグループに別れます!しかし!!女子はわずか2人!よって女子は必ず男子の誰かとペアになります!」
「え、ということは・・・」
「そう!男子のうち哀れな2人は、ヤロー同士でペアを組んでもらいますっ!」
「うわっ、それはないわ~・・・優を除いて」
「死ね、五郎」
「わっ!優くんの目がいつになく本気!」
瑠千亜はそうとう張り切っていたのか、ごそごそと鞄からくじを取り出した。
2人一組・・・
確かに、ここは90分という時間制限つきで、大人数で遊ぶよりも少数の方が効率がよく、ペア料金と言って、値段も安くなる。
梨々と、組みたい・・・
無意識に、心がとくんと跳ねた。
梨々と、二人きりで遊べるかもしれないんだ・・・
「よおーし!じゃあやるぞ~!・・・っせーのっ!!!」
バッと6人が一気にくじを引いた。
「・・・『すか』と書いておる・・・」
「うわぁ~!ありえねぇ!!お前かよ!五郎かよ!俺もスカだよ!」
「一番は誰だ?」
「あ!あたし~・・・あ!優くんも一番?」
どうしよう・・・
「あれ?ってことは・・・」
嬉しい・・・
「宜しくね!隼くん!」
なんと、二番の紙を持った梨々が、俺のところへ駆け寄って来た。
「宜しく!梨々さん!」
やった!嬉しい!
梨々と、遊べるんだ!
しかも、二人きりで・・・
デートのように・・・
そう考えただけで、押さえ切れないくらい胸が高まる。
「なんだよ、やっぱりそこ二人かよ!」
「隼、言うておくが抜け駆けは禁止であるぞ。」
「いや、ていうかもう怪しいんじゃない?」
「もっ、もうっ!止めてよみんなして~」
でも、肝心なことを忘れていた。
俺は梨々を好きだから、勝手に盛り上がっていたが、梨々の好きな人は俺ではないかもしれない。
勝手に盛り上がるのは、失礼かな?
「梨々、隼くんと組めて嬉しいよ!隼くんとなら、絶対楽しく遊べるね!」
ちらりと梨々の様子をうかがったが、俺の不安を振り払ってくれるかのように明るく言い放った。
「俺も嬉しいよ!今日は宜しくね、梨々さん!」
梨々が誰を好きとか、かなり気にはなるけど、今日はせっかくの機会なんだ。
俺も梨々も、お互いに最高に楽しみたいと思った。
午前10時。
アミューズメントパークに集まった俺たちは、瑠千亜の潔い第一声によって記念すべき今日を始める。
「それにしても五郎!お前意外と遅かったな!」
「うむ。すまない。地図を見てもなかなか分かるまい。」
「意外と方向音痴だからな、こいつは」
からかうようにして五郎を咎める瑠千亜と、それをいつものことのようにさらりと流す五郎、そして2人を見守る優。
いつもと変わらなくわいわいしている三人を見ると、今日で俺らはさらに仲良くなれる気がする。
「あら、五郎くん方向音痴なら早めに言ってくれれば良かったのに。実は私もそうとう迷って・・・」
「何!?清和さんも方向音痴なのか!?そうだな、本当に早く言えば良かった!」
「いや、アホかお前ら!!方向音痴同士が互いに報告しあったところでどうするんだ!?」
「その時は瑠千亜くんになんとかしてもらうわ」
「ああっ!?」
こちらは珍しくボケをかます清和さん。
しかし服はイメージと変わらず、黒を基調とした大人っぽい雰囲気だ。
本当に、清和さんの魅力は梨理と違わずに素晴らしく、頼られた瑠千亜なんて、言葉は荒いけど完全に照れちゃってる。
「はーや~とー!テメー!梨々ちゃんと何ラブラブしてたんだ!!」
「えっ!?」
瑠千亜の急な発言に、その場にいた瑠千亜以外の全員が驚きの声を上げた。
「なっ?!ラブラブって!?ただ話してただけで・・・」
「嘘つくなー!テメーまた抜け駆けしやがったな!」
「違うよ!本当にっ・・・ねえ、梨々さん!?」
「うっ、うん!お話はしてたけど、ラブラブでは・・・」
「いーや!ラブラブしてたね!」
「おい、いい加減にしろ。それ以上の無駄な検索は梨々さんに失礼だ。」
「隼はどうでもいいのか?」
「隼はお前が守ってやればよい、優・・・ってああああぁぁぁー!!」
「五郎、もう俺はお前を許さん。」
「うーん・・・でも確かに、隼くんと梨々ってかなり仲良いよね?」
腕で首を絞められながら優に連れて行かれた五郎をたすけに行こうとしたところ、清和さんが手で俺を遮るようにしながら言った。
「ほらな!な、清和!こいつら絶対付き合ってるよな!」
「付き合うまではどうかしら。でも、お互い好意は持ってるでしょ?」
「ちょっ、2人とも!これ以上は五郎の言う通り梨々さんに失礼だよ!」
どうしよう・・・これ以上探求されると、うまく乗り切れられる気がしないよ・・・
「梨々は別に失礼と思わないよ!だって仲が良いのは本当だし、それに、隼くんは話しやすいし、優しくしてくれるし・・・隼くんは、最高のお友達だよ!」
梨々が満面の笑みで元気に言い放つ。
「ねっ!隼くん!」
「えっ!うん!」
不意に振られた梨々の言葉になんとか合わせて答える。
・・・また・・・
顔が熱くなるような誉め言葉を並べておきながら、思い切り『友達』と言い放つ。
梨々の自由な発言に、俺の心は翻弄されるだけ。
・・・友達、かぁ・・・
さすがの梨々でも、皆の前で好きな男の人に友達とはいわないだろう。
「ねー、梨々の好きな人って、もしかしてこの四人の中にいる?」
くたくたになりながらも笑みを浮かべている五郎と、呆れたようにそんな五郎を見る優が戻ってきたとき、清和さんは梨々に聞いた。
「えっ、それは・・・言えないよ・・・」
「いいじゃん!お願い!だっていずれ言うんでしょ?」
「うん・・・まあ、そうだけど・・・」
「是非お聞かせ願いたい、梨々さん。」
「大丈夫、五郎ではないから。・・・でも俺もそれは気になる。」
「名前までは言わなくていい。」
やっぱり梨々の好きな人は、皆気になるんだね・・・
俺もかなり気になる。
だけど・・・
「でも梨々さんが嫌なら無理して言わないでもいいよ。間接的に、本人にも聞かれちゃう訳だし・・・」
「ありがとう隼くん。やっぱり優しいね。・・・でも、大丈夫。梨々の好きな人はこの中にいるから・・・」
少し照れたように下を向きつつ、意外と梨々はさらりとカミングアウトした。
・・・良かった!
この中にいるんだ・・・
梨々の、好きな人・・・
その事実が、俺の淡い期待を再発させる。
何度も都合良く解釈する自分を叱責したが、確率は4分の1。
梨々がはっきりと好きな人を言うまでは、きっと今まで以上に期待ばかりしてしまうだろう・・・
でも、
「ええー!?マジでか!?やべ、俺春来たんじゃね?」
「調子に乗るな。間違いなくお前ではない。」
「うるせー優!お前こそないんだよ!この堅物じじいが!」
「梨々さんに好かれるとは、そうとうな者のはず・・・ちくしょう、おのれぇ!誰だ!?梨々さんのバージンを奪うのは!」
「話が早いわぁ!あほか、お前最低野郎だな!なんで好きイコールそういうことになるんだよ!」
「瑠千亜、今更こいつに正常な恋愛を説こうとしても無駄なだけだ。」
いつも楽しんでいて、思いやりがあって、どこか暖かいこの三人なら・・・
もし、4分の1が俺じゃなくても、この三人の誰かなら、喜んで梨々を応援できる。
きっと、誰と付き合っても、梨々は幸せになれるだろうから。
「よーし!!じゃあ、ここで運命を試そうではないかっ!」
わいわいしていた中から、瑠千亜の大声が響いた。
「運命を試す?」
「そう!今からこの6人は2人づつのグループに別れます!しかし!!女子はわずか2人!よって女子は必ず男子の誰かとペアになります!」
「え、ということは・・・」
「そう!男子のうち哀れな2人は、ヤロー同士でペアを組んでもらいますっ!」
「うわっ、それはないわ~・・・優を除いて」
「死ね、五郎」
「わっ!優くんの目がいつになく本気!」
瑠千亜はそうとう張り切っていたのか、ごそごそと鞄からくじを取り出した。
2人一組・・・
確かに、ここは90分という時間制限つきで、大人数で遊ぶよりも少数の方が効率がよく、ペア料金と言って、値段も安くなる。
梨々と、組みたい・・・
無意識に、心がとくんと跳ねた。
梨々と、二人きりで遊べるかもしれないんだ・・・
「よおーし!じゃあやるぞ~!・・・っせーのっ!!!」
バッと6人が一気にくじを引いた。
「・・・『すか』と書いておる・・・」
「うわぁ~!ありえねぇ!!お前かよ!五郎かよ!俺もスカだよ!」
「一番は誰だ?」
「あ!あたし~・・・あ!優くんも一番?」
どうしよう・・・
「あれ?ってことは・・・」
嬉しい・・・
「宜しくね!隼くん!」
なんと、二番の紙を持った梨々が、俺のところへ駆け寄って来た。
「宜しく!梨々さん!」
やった!嬉しい!
梨々と、遊べるんだ!
しかも、二人きりで・・・
デートのように・・・
そう考えただけで、押さえ切れないくらい胸が高まる。
「なんだよ、やっぱりそこ二人かよ!」
「隼、言うておくが抜け駆けは禁止であるぞ。」
「いや、ていうかもう怪しいんじゃない?」
「もっ、もうっ!止めてよみんなして~」
でも、肝心なことを忘れていた。
俺は梨々を好きだから、勝手に盛り上がっていたが、梨々の好きな人は俺ではないかもしれない。
勝手に盛り上がるのは、失礼かな?
「梨々、隼くんと組めて嬉しいよ!隼くんとなら、絶対楽しく遊べるね!」
ちらりと梨々の様子をうかがったが、俺の不安を振り払ってくれるかのように明るく言い放った。
「俺も嬉しいよ!今日は宜しくね、梨々さん!」
梨々が誰を好きとか、かなり気にはなるけど、今日はせっかくの機会なんだ。
俺も梨々も、お互いに最高に楽しみたいと思った。