ウィスタリア学園
舞姫side

1匹の白虎に噛み付かれて恐怖なんて出てこなかった。

けど、白虎の瞳は不安、迷い、恐怖、憎しみ、怒り、復讐……と言った負の感情だった。私が1番知っている目。そして、1番見たくない目だった。


肩から血が出ている。この結果は、私が対象としたものしか怪我を治さない。

ーーー私が対象にしたのは白虎

だたら、私の怪我は治らない。人間に怨みがあるのなら私に向けたらいい。私を殺して貴方達白虎が気が済むのならそれでいい。貴方達が人間に苦しんだ分私が癒してあげるから。

私は噛み付いた白虎に「大丈夫。大丈夫。大丈夫……」と囁いた。白虎の頭を撫でながら。

「私は敵じゃないよ。私は、貴方達と友達になりたいんだ。私は裏切らないよ。絶対に……」

これは事実。私は、元から再び白虎達と友達になりたかった。私を救って種族だから。だから私は、裏切らない。沢山の恩と借りがあるから。


噛み付いていた牙が少し緩くなった気がした。

『その者を離さんか。』

声の方を向くと、少しの威嚇を解き放っているが優雅で勇ましく気品溢れる白虎……いや、白帝がそこにいた。
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