シンデレラは眠れない
意外な言葉に驚く結子のとなりを彼はふわりと通りぬけると事務所のエントランスの前で親指をたててぱちりとウインクして風のように去っていった。
爽やかな柑橘系のコロンの香りを残したままで…

 『ウソ?!』

慣れない事に結子は全身から湯気が出た思いだった。

頬も耳も露出している部分が全部熱い。

生まれてこのかた23年間、男性にウインクされたことなんか皆無だった。
 『どうしよう? まだどきどきしてる…』

そんなに暑い日ではないのに結子は汗を拭った。首にまいていた山田工務店と印刷されたタオルで……。

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