人魚のいる街

 「出てきなさい!」

 警戒を解かない二人に、眉を寄せ明らかに困惑した男が言葉を濁し視線を外した。

 「…本当に言いずらいのですが…当方着衣を一切しておりません」

 一瞬の間を置き、明らかに表情を崩しいわゆるドン引きのツナミ。

 「…ここで何を?」

 構わず続ける女に、男も真面目な顔で頷く。

 「あまりにもきれいな水を見つけたので、泳ぎたいなと思い立ちまして」

 「全裸で?」

 「はい。全裸で」

 「まってよ!アシタあいつ変態よ!早く逃げましょう!」

 冷静なようで冷静でなさそうなアシタの手を引くも、びくともしない。

 「アシタ!はやく!」

 「お待ちください。このモノ何か知っているかもしれません」

 その一言に、ツナミの動きも止まった。

 「何も存じ上げません。当方ただの泳ぐことの大好きな男の子ですので」

 慌てて否定する男であったが、ツナミがポツリと呟いた。

 「みたのね?」

 「なにもみていません。何も聞いていません」

 「怪しいのでとりあえず罰しておきましょう」

 「そうね。海に重りをつけて沈めときましょう」

 「疑わしくは罰しないで!」

 悲痛な男の叫びが周囲に響き渡り、周辺の鳥が一斉に飛びだった。

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