恋の宝石ずっと輝かせて2
「楓太、しーっ。誰か来ちゃったら困るじゃない」

 花梨はそわそわしだして、辺りを何度も確認している。

 楓太はまるで遊んでほしいかのように、何度も吼えては、花梨の足元で飛んだり跳ねたりとじゃれ付きまわっていた。

「どうしたの、楓太? お願いだから静かにして」

 息を潜めて覗いている仁とユキは、楓太の突然の行動に首を傾げていた。

 楓太があまりにも吼えるので、家からまた誰かがやってきた。

「楓太が鳴いてるけど、誰かそこにいるのか?」

 太い男の声だった。

 シルエットからして浴衣のような服を身に付けていた。

 咄嗟に花梨は祠から離れてその男のところへ駆け寄った。

「なんだ、花梨、こんな夜に外で何やってるんだ」

「別に何も。そんなことよりほら玄関を開けっぱなしにしてたら蚊が入るじゃないですか」

 花梨は男を押し戻すようにして一緒に家の中へと入っていった。

 その後は玄関の明かりが消されて誰も外に出てくる気配は一切しなかった。

 仁とユキは暫く黙り込んでいたが、また足元に楓太が現れ我に返った。

 小声で仁は楓太に話しかける。

「楓太、花梨さんは何をしようとしてたんだい? それを知ってたから楓太はわざと吼えたんだろう」

「さあな。拙者は気まぐれだから、気分次第で吼えることがある」

「でもあの様子だと、わざと騒がしくして人を呼ぼうとしてたみたいだったわよ」

 ユキも訳が知りたいと訊いた。

「偶然だろう」

 楓太はしれっと返す。

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