恋の宝石ずっと輝かせて2

「何度もお邪魔して申し訳ございません。しかもこんな夜分に」

 礼儀正しく、仁は頭を下げた。

「何を仰ってるんです。やあ、またお越し下さって嬉しい限りです。なあ婆さんや」

「そうですよ。さあさ、そんなところで立ってないでおあがり下さいませ」

 瞳の祖父母は仁の両側から引っ張るように家の中へ入れようとした。

 仁も目的があるので今回は堂々としたものだった。

「先輩がまた来てくれたなんて、嘘みたい」

 瞳は目を潤わせていた。

「誰か来たのか?」

 メガネをかけた男性が奥から首だけ出して仁を見ていた。

 すでに上がりこんだ仁が廊下を歩いているとき、そのめがねの男性とばっちり目が合った。

 そしてその男性がいる部屋へ通されると、背筋を伸ばして挨拶した。

「初めまして。瞳さんと同じ高校に通います新田仁と申します。お昼にお蕎麦をご馳走になりまして、そのお礼として参りました。ちょっと貰い物で申し訳ないんですけど、お蕎麦がとても美味しかったのでどうしてもお礼がしたかったんです」

 不自然じゃないだろうか、少し堅苦しくないだろうかと仁は冷や汗をかいていた。

 目的のためなら仕方がない。やるところまでやるしかない。

 覚悟を決めた仁は、正座をして持っていた箱を両手で畳を滑らすように相手に差し出した。

「ほう、今時の学生さんにしては律儀で礼儀正しいな。これはこれはわざわざすみません。あっ、私は瞳の父親の八十鳩徳一郎です。仁君でしたな。そういえばお噂は聞いております。良子先生の甥ごさんでしたね」

 徳一郎もかしこまって挨拶をする。

「そんな堅苦しい挨拶は抜きにして、さあさあこちらへお座り下さい」

 祖父が座布団を差し出し、仁はそこへ座った。

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