恋の宝石ずっと輝かせて2
「そんなことなかったですよ。キイトは病気がちで、静養のために一度山を離れましたけど、それからカジビも同じように姿を消しました。もしかしてふたりは一緒なのかなって思ってたくらいですから」

 トイラがキイトから聞いた話をユキと仁は又聞きしただけだったが、随分と話の筋が違っていた。

 何かが食い違っている。

 どっちが本当の話なのだろうか。

 仁もユキも腑に落ちない顔をして困惑する。

「わしが、今回のことをカジビのせいにしてしまったのも、自分には都合がよく、人はきっとそう信じると思ってやったことだった。だから早くカジビを探して、事情を話したかったんじゃ。聡明な心の広いカジビなら許してくれて、そしてどうすればいいのか助けてくれると思ってな」

 セキ爺は湯飲みを手にしてお茶をすすった。

「それじゃセキ爺も本当はカジビが悪い奴だっていう風には信じてないんだね」

 これは仁だった。

「ああ、実のところはそうじゃ。カジビには濡れ衣を着せて申し訳ないと思っておる」

「カジビはキイトが静養のために山を離れた同時期に姿を消しているってことか……それはいつのことなんですか?」

 ユキは何かが分かりかけてきたような気がした。

「そうね、あれは瞳が中学に上がる頃だったかしら。今から3、4年前ってところね」

「まだ最近の話だったんだ。その頃他に、何か変わった出来事はなかったですか?」

 仁が尋ねた。

「そうね、私はすでに人間界にいたから、山の出来事の話には疎かったわ。お父さんは何か気がついたことあった?」

「そうじゃのう。特にこれといったことはなかったな」

 二人は記憶を呼び起こそうと、唸りながら頭を捻っていた。そして花梨が突然声を上げた。

「あっ、そういえば、その頃だわ。カネタさんを八十鳩家が雇ったのは。でもこんなこと全く関係ないわね」

 花梨は役に立ちそうなことが思い出せずに、申し訳ないと肩を竦めた。
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