恋の宝石ずっと輝かせて2

「その石は何かね。なんだか中が赤くなっているようじゃが」

 セキ爺は初めて見たように、目をしばたたいていた。

 仁は瞳から貰った経緯を話すと、花梨は自分の娘の行動に優しく微笑んでいた。

「あの子も私に似て、一生懸命になると暴走しちゃうところがあるから。よほど新田さんのことが好きなのね」

 仁は少し困ったような顔でなんとか愛想笑いを試みた。

「いいのよ、無理しなくても。新田さんはユキさんが好きなんでしょ」

 複雑な状況なので、これにも仁は困ってしまった。

 ユキもどう反応していいのか分からず、つい下を向いていた。

 セキ爺は気を遣って立ち上がり、花梨に帰る意志を態度で伝えると花梨も黙って後に続いた。

 仁とユキは二人を玄関で見送る。

「色々と世話になったのう。この恩は忘れん。ほんとうに有難う」

 セキ爺と花梨は深々と頭を下げていた。

「いえ、お気を遣わないで下さい。人間でありながら、こうやってお知り合いになれたこととても光栄に思います。僕たちは山神様の秘密は守りますし、どうかその点についてはご安心下さい」

「あんたらの方がわしらの世界以上のことを良く知っていることじゃろう。またいつか力になってもらわんといけないことがあるかもしれん。いい理解者と知り合ったと思っておる。これからも宜しく頼むわい」

 仁もユキもその言葉が嬉しく、二人して顔を見合わせて笑っていた。

 その時、一旦帰ろうとしていたセキ爺の足が止まった。

「あっ、そうじゃ大切なことを忘れておった。トイラの件じゃが、キイトから詳しい話はもう聞いているのかのう?」

「人間にする方法のことですか?」

 ユキが聞いた。

< 203 / 253 >

この作品をシェア

pagetop