恋の宝石ずっと輝かせて2
 仁が去ったとたん、家の中は静寂となり空虚さが漂う。

 静かな場所に一人でいると、ユキは燃え尽きたあとのように放心状態になってしまった。

 疲れているのもあったが、ユキも一度お風呂でさっぱりして、体からリフレッシュを試みた。

 その後は、クラッシク音楽を流してリラクゼーションを試みる。

 何も考えないようにしようとしたが、トイラが人間になったときのことを想像してしまう。

 また触れることも、話をすることもできる。

 過去のトイラと過ごした思い出が鮮明に蘇ってくる。

 だがここ一年の記憶では、トイラの思い出よりも仁の事の方が思い出されてしまった。

 仁の支えがあったからこの一年やってこれた。

 こんな事件に巻き込まれなかったら、仁に支えられたままトイラのことを忘れていたのだろうか。

 その時、自分は仁に対してどう思っていたのだろう。

 あまりにも当たり前の存在に感じて、自分のことしか考えてなかったことをユキは悔やんだ。

 仁はいつでもユキのためにと行動を起こして協力してくれる。

 トイラが人間になったとき、仁に対して自分はどう接していけばいいのか分からなくなってきた。
 

『トイラが戻ってきたから、もう仁は必要ないの。さようなら』


 言葉にしたら残酷だが、結局はそういう行動を取ってしまうのだろう。

 ユキはなんだか自分がとてつもない間違いを起こしているようなそんな気分になってくる。

 トイラも大切だが、仁も大切だ。

 上手く言葉にはできないけど、繋がりというかけがえのないものを感じてしまう。

「きっと仁なら、私が望むように、私の幸せを一番に考えてくれるんだろう。自分を犠牲にしてでも……」

 心に溜まった苦しさがため息となって、胸の中から漏れるように出てきていた。
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