恋の宝石ずっと輝かせて2

 ユキの家でお茶をご馳走になった後、花梨の車でセキ爺は山の麓まで送られた。

 セキ爺が車から降り、山の中へ去っていこうとするのを引きとめるように慌てて車の窓を開け、花梨は声を出した。

「お父さん! カジビのことで詳しい事が分かったらすぐに連絡してね。それと、そろそろお祭りがあるでしょ。キイトにこの夏、山神様にお供えするもので希望があればついでに訊いておいてくれない」

「そうじゃのう。いつものようでいいと言いたいところだが、こっちは赤石のことで負い目がある分、気を遣ってしまうのう」

「新田さんとユキさんにも何かお礼をしなくっちゃね。お父さんも何がいいか考えておいてよ」

「ああ、わかった」

「それじゃ、また来るね」

 花梨は再び車を走らせて、元来た道を戻っていく。

 セキ爺は暫くその車が去っていくのを見ていた。

 そして気を取り直して口笛を一吹きしては、鳥達を集め指示を出していた。

 その一部始終をカネタは木々の陰に隠れて見ていた。

 セキ爺の姿も山の奥に消えていった頃、カネタは隠れていたせいで強張っていた身の力を放ち、何度も周りを確認してから山を後にした。

 手には山で摘んだ葉や木の実のようなものを握り、それを揉み潰す。

 少しだけ口にして顔を歪ませ、あとは体に刷り込んでいった。

「いつまでこんなことして正体を誤魔化さないといけないんだ」

 不満一杯に口元が歪んでは「ちぇっ」と舌打ちしていた。

「そろそろ行動を起こさないと」

 カネタは何かを閃いたように急に走り出した。

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