恋の宝石ずっと輝かせて2

 花梨からの連絡を受け、ユキは自転車に乗り指定された場所へと足を向けた。

 午後三時を過ぎた日差しは弱まることなく、暑さが肌に差してくる。

 カネタの噂は聞いていたし、自分は知らなくとも相手は自分とすでに一度会っている。

 仁の落し物を取りに行くだけならば、何も問題はないと疑うこともなくペダルを漕いでいた。

 畦道に差し掛かり、前方を見れば、緑の葉が大地を覆ってる中で男性の姿がポツリと見えた。

 あの人に違いないと、元気よく進んで行った。

 ブレーキを掛けて、自転車を適当な所に停め、畑仕事をして腰をかがめているカネタにユキは少しずつ近づきながら叫んだ。

「こんにちは」

 カネタは振り返り、微笑を浮かべるが、細い目は獲物を狙っているといわんばかりに鋭くユキを捉えた。

 畑の中からカネタが近づいて来ると、ユキはふと既視感を覚えた。

 だがすぐには認識できない。

 トイラの意識が出ているときに出会ってるわけだから、そういう気持ちになったのだろうと思った。

「確か名前はユキ……だったな」

 ユキと呼び捨てにされ、親しくないだけに抵抗を感じてしまったが、無理して愛想笑いをしながら大人しく首を縦に振った。

「なんだか、昨晩会ったときとえらく感じが違うな。前はボーイッシュというのか男そのものに思えたけど」

「えっ、そ、そうでしたか?」

 カネタはじろじろとユキを見ていた。

 ユキはその視線に耐えられなくなり、早く用事を済ませたいと催促する。

「あ、あの。仁が落としていったものなんですけど……」

 ユキの質問を聞くと、カネタは鼻で笑った笑みを浮かべ冷ややかにしれっと返した。

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