ロスト・ラブ
「あ、茜ちゃんっ」
無意識に黙りこくってしまっていた私に、胡桃は相変わらず涙目で私の名前を呼んだ。
「や、柳くんにはああ言われたけど、これだけは言わせて。胡桃が柳くんに抱きしめられたなんてこと、絶対にないから」
「え……?」
涙目で訴える胡桃のその言葉に、嘘は感じられない。
本当は何があったのかはわからない。
でも、これ以上胡桃に詳細は聞けなかった。
心なしかホッとしてしまっている自分がなんだか恥ずかしい。
「ねぇ、茜ちゃん」
「うん?」
「……ううん、やっぱりなんでもない」
「えー、なにそれ」
ヘラッと笑った胡桃に少し違和感はあった。
けど、胡桃が言葉を飲み込んでくれたように、私も胡桃に「話して」とは言えない。