ロスト・ラブ


すると、そばでやけにチラチラとこちらを見てくる男子がいることに気が付いた。


「あ、あの、胡桃ちゃん」

遠慮がちにこちらへとやってきたその男子は、やっぱり胡桃に声をかける。


「よかったら……俺が勉強教えようか?」

「え?」


そして言われた内容に、胡桃は思わず声を漏らした。


私からしたら、完全に下心丸見えのお誘い。


いつもなら胡桃の返事も待たずに私が断るところだけど、少しだけ自分でブレーキをかける。


チラッと胡桃の様子を確認すると、やっぱりというか、胡桃は困っていた。


えーっと、この男子の名前は確か……。


スッと視線をその男子へと向けて、朝と同じように短く息を吐く。


「悪いんだけど、」


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