ロスト・ラブ
目をぱちくりさせている胡桃の心情も、きっと私と同じだろう。
え、なに……バカ?この人。
精一杯に言葉を選んで私なりに丁寧に断ったのが、無駄だったんじゃないかとさえ思えてくる。
「いや、だから」
「ねっ?沢野さんもいるほうが胡桃ちゃんも嬉しいだろうし」
グイッと私の机に乗り出してそう提案された瞬間、ぐらりと視界が揺れたのがわかった。
あ、まずいかも。
いくら男の人への意識を変えたからと言っても、絶対的に越えられない距離というものがある。
「あ、あのっ!」
私のその限界に気が付いてくれたのか、胡桃がその男子に向けて声を張った。